労働衛生コンサルタントとは、事務所などからの求めに応じ、労働者の衛生水準を高めるために事業場の衛生についての診断や指導を行う名称独占の国家資格です。
労働衛生コンサルタントの特徴
労働安全衛生法による資格のひとつです。
労働衛生コンサルタントの仕事内容
労働衛生コンサルタントは事業場の衛生に関する改善指導、教育訓練、評価、研究など衛生全般についてのコンサルタント業務を行います。
一般的に衛生に関する仕事と言えば「衛生管理者」を思い浮かべる方も多いと思います。
衛生管理者は一定規模以上の事業場に必ず選任しなければならないと定められているのですが誰でもいいわけではなく、あらかじめ定められた資格を有している者などの中から選任する必要があり、労働衛生コンサルタントはその対象にもなります。
また衛生管理者は必ずその事業場の専属でなければなりませんが、2人以上の衛生管理者を選任するとき、その中に労働衛生コンサルタントがいるときは、労働衛生コンサルタントのうち1人は専属でなくても構いません。
就職向きの資格と言うより独立向きの資格
労働安全コンサルタントと同様に労働衛生コンサルタントも就職向きの資格と言うよりは独立向きの資格と言えます。
労働衛生コンサルタント試験は医師が受験する場合科目免除が強力なため、産業医と兼業している労働衛生コンサルタントが多いです。
労働衛生コンサルタントの資格のみで独立することは一般企業に衛生管理者がいることもあって難しいと言え、労働安全コンサルタントとの兼用など工夫が必要となるでしょう。
従業員の健康状態に関することにかかわる仕事ですので医療系の資格と相性が良いと言え、医師はもちろん受験資格を満たす条件になる薬剤師や保健師も相性が良いと言えるでしょう。
他資格への影響
労働衛生コンサルタントの資格を持っていると社会保険労務士試験の受験資格を満たします。
また労働衛生コンサルタントは作業環境測定士試験の科目免除対象となっており、申請することで共通科目の「衛生一般」「関係法令」が免除となります。
労働衛生コンサルタントになるには
試験に合格し、登録することで労働衛生コンサルタントを名乗ることができます。受験資格がありますので確認が必要です。
受験資格について
受験資格を満たすものは学歴であったり規定の有資格者であったりなど非常にたくさんありますのでその一部を紹介します。
- 大学(短期大学を除く)おいて理科系統の正規の課程を修めて卒業した者で、その後5年以上衛生の実務に従事した経験を有するもの
- 短期大学又は高等専門学校において理科系統の正規の課程を修めて卒業した者で、その後7年以上衛生の実務に従事した経験を有するもの
- 高等学校又は中等教育学校において理科系統の正規の学科を修めて卒業した者で、その後10年以上衛生の実務に従事した経験を有するもの
- 医師国家試験に合格した者、医師免許を受けた者とみなされた者、医師免許を受けることができる者
- 歯科医師国家試験に合格した者、歯科医師免許を受けた者とみなされた者、歯科医師免許を受けることができる者
- 薬剤師
- 保健師として10年以上その業務に従事した者
- 技術士試験合格者
- 1級建築士試験合格者
- 衛生管理者のうち、衛生工学衛生管理者免許を受けた者で、その後3年以上衛生に係る技術的事項で衛生工学に関するものの管理の業務に従事した経験を有する者
- 衛生管理者として10年以上その職務に従事した者
- 厚生労働大臣の登録を受けた者が行う衛生に関する講習を修了し、かつ、15年以上衛生の実務に従事した経験を有する者
- 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構により学士の学位を授与された者(理科系統の正規の課程を修めた者に限る)又はこれと同等以上の学力を有すると認められる者で、その後5年以上衛生の実務に従事した経験を有するもの
- 衛生管理士または衛生管理士であった者
- 労働衛生専門官または労働衛生専門官であった者で、8年以上衛生の実務に従事した経験を有するもの
- 労働基準監督官として8年以上その職務に従事した者
- 水産大学校、防衛大学校、気象大学校、海上保安大学校を卒業した者で、その後5年以上衛生の実務に従事した経験を有する者
- 臨床検査技師、衛生検査技師として10年以上その業務に従事した者
etc
合格率は25%~30%
労働衛生コンサルタント試験の合格率は25%~30%程度になり、超難関と言うわけではないと言えます。
試験の内容
労働衛生コンサルタント試験は区分ごとに試験を行います。
区分は「保健衛生」「労働衛生工学」の2つでいずれか1つを選択し、その区分ごとに筆記試験と口述試験を行います。
筆記試験の科目は択一式が「労働衛生一般」と「労働衛生関係法令」の2科目。
そして記述式は試験の区分のうち「健康管理」「労働衛生工学」のいずれか1科目を選択して解答します。
口述試験は筆記試験合格者のみが受験することができ、受験した区分の内容が問われます。
科目免除について
労働衛生コンサルタント試験には所定の資格を持っているなどの条件を満たすことで科目免除があります。
特に医師、歯科医師は強力な免除があります。
区分「保健衛生」の免除
医師国家試験合格者、医師免許を受けた者とみなされた者、医師免許を受けることができる者、歯科医師国家試験合格者、歯科医師免許を受けた者とみなされた者、歯科医師免許を受けることができる者は保健衛生の区分において労働衛生一般、健康管理の科目が免除になります。
さらに上記の方が厚生労働大臣が指定する者が行う講習を修了していれば保健衛生の科目において全科目が免除となります。
また薬剤師と10年以上業務に従事した保健師は保健衛生の区分において労働衛生一般が免除になります。
他には、健康管理に係る中央労働衛生専門官又は独立行政法人労働者健康安全機構において健康管理に関する研究に関する企画、指導等を行う者として5年以上その職務に従事した者は保健衛生の区分における健康管理の科目が免除となります。
区分「労働衛生工学」の免除
技術士衛生工学部門の第二次試験に合格したものは労働衛生工学の区分において労働衛生工学の科目が免除となります。
また作業環境測定士は労働衛生一般、労働衛生関係法令の科目が免除対象です。
他には、労働衛生工学に係る中央労働衛生専門官又は独立行政法人労働者健康安全機構において労働衛生工学に関する研究に関する企画、指導等を行う者として5年以上その職務に従事した者であれば労働衛生工学、労働衛生工学が免除となります。
全区分共通の免除
衛生管理士又は労働衛生専門官として7年以上その職務に従事した者、労働基準監督官として10年以上その職務に従事した者(労働基準監督官採用試験のうち労働基準監督Bの区分試験に合格して採用された者その他これに準ずる者に限る)は労働衛生一般が免除となります。
労働衛生専門官として7年以上その職務に従事した者、労働基準監督官として10年以上その職務に従事した者は労働衛生関係法令の科目が免除対象です。
まとめ
以上が労働衛生コンサルタントに関するまとめになります。
就職向きの資格と言うよりは独立向けの資格であり、また医療系の資格を持ち活躍している人にとってはとても相性の良い資格となるでしょう。
少しでも参考になれば幸いです。