労働安全コンサルタントとは、事務所などからの求めに応じ、労働者の作業時の安全に関する診断と安全な職場づくりの指導を行う名称独占の国家資格です。
労働安全コンサルタントの特徴
労働安全衛生法による資格のひとつです。
労働安全コンサルタントの仕事内容
労働安全コンサルタントは労働者の作業時における安全に関するコンサルタント業務を行うことが仕事になり、設備の新築・増改築時の安全面の指導や安全に関する教育訓練、安全に関する評価や調査、研究などを行います。
一般的に企業内の安全に関する仕事と言えば「安全管理者」を思い浮かべる方が多いと思います。
安全管理者は一定の条件にあてはまる企業が選任しなければならないものですが、この場合「その事業場に専属の者」になってしまいますので他の職場の安全管理を行うことはできないのですが、労働安全コンサルタントはどこでもできます。
労働安全コンサルタントの方が安全管理者に選任された場合であっても2人以上安全管理者がいる場合、そのうち1人の労働安全コンサルタントは専属でなくてもかまいません。
独立向きの資格と言えます
安全管理者と違いどこの職場においても安全に関するコンサルタントができる資格ですので、基本的に就職するための資格と言うよりは独立資格と言えます。
とは言え労働安全コンサルタントの資格だけでは厳しいので他の資格も取得して独立される方も多く、また相性の良い資格はたくさんあります。
労働安全コンサルタントは大雑把に言えば爆発や感電などの事故を防ぐためにどうすればよいかと言ったアドバイスを行うコンサルタントですので技術コンサルタントの仕事ができる技術士と相性が良いと言えます。
他には同じくコンサルタント系の資格である中小企業診断士や社会保険労務士も相性が良い資格と言えますし、労働衛生コンサルタントと共有して仕事をしている方もいらっしゃいます。
独立して成功した方の中には年収1000万円以上の方もいらっしゃいますが、ほとんど稼げないと言う方もいます。成功するには資格をどう利用するかあらかじめ明確にしておく必要がありますね。
他資格への影響
労働安全コンサルタントの資格を取得すると社会保険労務士試験の受験資格を満たします。
社会保険労務士は労働安全コンサルタントと相性の良い資格ですが人によっては受験資格が厳しくなってしまう資格ですのでうまく活用したいところです。
労働安全コンサルタントになるには
試験に合格し、厚生労働省に備える名簿に登録されることで労働安全コンサルタントを名乗れます。受験資格がありますので確認が必要です。
受験資格について
受験資格を満たすものは学歴であったり規定の有資格者であったりなど非常にたくさんありますのでその一部を紹介します。
- 大学(短期大学を除く)において理科系統の正規の課程を修めて卒業した者で、その後5年以上安全の実務に従事した経験を有するもの
- 短期大学又は高等専門学校において理科系統の正規の課程を修めて卒業した者で、その後7年以上安全の実務に従事した経験を有するもの
- 高等学校または中等教育学校において理科系統の正規の学科を修めて卒業した者で、その後10年以上安全の実務に従事した経験を有するもの
- 技術士第二次試験合格者
- 第1種電気主任技術者免状の交付を受けている者
- 1級土木施工管理技士・1級建築施工管理技士
- 1級建築士試験合格者
- 安全管理者として10年以上その職務に従事した者
- 厚生労働大臣の登録を受けた者が行う安全に関する講習を修了し、かつ、15年以上安全の実務に従事した経験を有する者
- 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構により学士の学位を授与された者(理科系統の正規の課程を修めた者に限る)又はこれと同等以上の学力を有すると認められる者で、その後5年以上安全の実務に従事した経験を有するもの
- 安全管理士または安全管理士であった者
- 産業安全専門官または産業安全専門官であった者で、8年以上安全の実務に従事した経験を有するもの
- 1級又は単一等級の技能検定に合格した者(技能士)の一部(とび技能士など)
- 労働基準監督官として8年以上その職務に従事した者
- 林業専門技術員として5年以上その職務に従事した者
- 水産大学校、防衛大学校、気象大学校、海上保安大学校を卒業した者で、その後5年以上安全の実務に従事した経験を有する者
- 日本国有鉄道が設置する教習機関において工学に関する課程(学校教育法による大学における工学に関する学科に準ずるものに限る)を修めて卒業した者で、その後7年以上安全の実務に従事した経験を有するもの
- 日本国有鉄道が設置する教習機関において工学に関する課程(学校教育法による高等学校における工学に関する学科に準ずるものに限る)を修めて卒業した者で、その後10年以上安全の実務に従事した経験を有するもの
etc
合格率は20%~30%
労働安全コンサルタント試験の合格率は20%~30%あたりになっています。
ちなみに平成28年度は最終合格率20.5%となっています。
試験の内容
まず労働安全コンサルタント試験は「機械」「電気」「化学」「土木」「建築」のいずれかひとつを選択し、その区分ごとに筆記試験と口述試験を行います。
筆記試験の科目は択一式が「産業安全一般」「産業安全関係法令」の2科目。
そして記述式は試験の区分のうち「機械安全」「電気安全」「化学安全」「土木安全」「建築安全」のいずれか1科目を選択して解答します。
口述試験は筆記試験合格者のみが受験することができ、受験した区分の内容が問われます。
科目免除について
労働安全コンサルタント試験は特定の資格を持っているなど条件を満たすことで科目免除があります。
試験区分「機械」の免除
以下に該当する方は「機械安全」の科目が免除されます。
- 技術士機械部門、船舶・海洋部門、航空・宇宙部門、金属部門の第二次試験合格者
- 機械安全に係る中央産業安全専門官又は独立行政法人労働者健康安全機構において機械安全に関する研究に関する企画、指導等を行う者として5年以上その職務に従事した者
試験区分「電気」の免除
以下に該当する方は「電気安全」の科目が免除されます。
- 技術士電気電子部門の第二次試験合格者
- 第1種電気主任技術者
- 電気安全に係る中央産業安全専門官又は独立行政法人労働者健康安全機構において電気安全に関する研究に関する企画、指導等を行う者として5年以上その職務に従事した者
試験区分「化学」の免除
以下に該当する方は「化学安全」の科目が免除されます。
- 技術士化学部門の第二次試験合格者
- 技術士農業部門の農芸化学を選択科目として第二次試験に合格したもの
- 化学安全に係る中央産業安全専門官又は独立行政法人労働者健康安全機構において化学安全に関する研究に関する企画、指導等を行う者として5年以上その職務に従事した者
試験区分「土木」の免除
以下に該当する方は「土木安全」の科目が免除されます。
- 技術士資源工学部門・建設部門の第二次試験合格者
- 技術士農業部門の農業土木を選択科目して第二次試験に合格したもの
- 技術士森林部門の森林土木を選択科目として第二次試験に合格したもの
- 1級土木施工管理技士
- 土木安全に係る中央産業安全専門官、労働安全衛生法第88条第2項の規定による届出のあった計画について同法第89条第1項の審査の事務を行う者又は独立行政法人労働者健康安全機構において土木安全に関する研究に関する企画、指導等を行う者として5年以上その職務に従事した者
試験区分「建築」の免除
以下に該当する方は「建築安全」の科目が免除されます。
- 1級建築施工管理技士
- 建築安全に係る中央産業安全専門官、労働安全衛生法第88条第2項の規定による届出のあった計画について同法第89条第1項の審査の事務を行う者又は独立行政法人労働者健康安全機構において建築安全に関する研究に関する企画、指導等を行う者として5年以上その職務に従事した者
全区分、択一式試験の免除
以下に該当する方は「産業安全一般」もしくは「産業安全関連法令」の科目が免除されます。
- 技術士経営工学部門の生産マネジメントを選択科目として第二次試験に合格したものは「産業安全一般」の科目が免除対象
- 安全管理士又は産業安全専門官として7年以上その職務に従事した者は「産業安全一般」の科目が免除対象
- 産業安全専門官として7年以上その職務に従事した者は「産業安全関連法令」の科目が免除対象
- 労働基準監督官(労働基準監督官採用試験のうち労働基準監督Bの区分試験に合格して採用された者その他これに準ずる者に限る)として10年以上その職務に従事した者は「産業安全一般」の科目が免除対象
- 労働基準監督官として10年以上その職務に従事した者は「産業安全関連法令」が免除対象
まとめ
以上が労働安全コンサルタントに関するまとめになります。
この資格だけで食べていくことはまだ難しいかもしれませんが他の資格と併用したり安全管理者としての経験を生かして定年後に独立される方もいらっしゃいますよ。
少しでも参考になれば幸いです。