作業環境測定士とは、人体に有害な物質を取り扱う作業場で作業環境測定を行うことができる業務独占の国家資格です。
作業範囲によって第一種と第二種にわかれます。
作業環境測定士の特徴
作業場の職業病を防ぐ重要な仕事です。
作業環境測定士の仕事内容・作業範囲
放射性物質や粉じんなど有害な物質を取り扱う作業場で働く作業者の健康を守るために、作業場の有害物質を調査したり分析したりする作業環境測定を行うことが仕事になります。
この作業環境測定業務は作業環境測定士しか行うことのできないため、作業環境測定士の資格は業務独占の国家資格になります。
資格は第一種と第二種が存在し、作業範囲が異なります。
第一種作業環境測定士は作業環境測定のデザイン・サンプリングおよび分析(解析を含む)のすべてを行うことができます。また以下の5つの区分に分かれています。
- 鉱物性粉じん
- 放射性物質
- 特定化学物質
- 金属類
- 有機溶剤
第二種作業環境測定士はデザイン・サンプリングと簡易測定機器による分析のみができるようになっています。
需要は安定!ダブルライセンスも有効
有害物質を取り扱う事業場では「必要な作業環境測定を行い、その結果を記録しておかなければならない」と安全衛生法で定められているため、有害物質を取り扱う事業場では作業環境測定士の資格を持っていることで非常に有利になるでしょう。
主な就職先も工場、病院、大学、研究所などと比較的幅広く、また有資格者は不足気味ですので取得する価値はあると言えます。
また作業環境測定士と相性の良い資格は複数あります。
労働者の健康を守るための仕事となるため同じく労働者の健康に従事する衛生管理者との相性は良いと言えます。
同様に労働者の健康や安全に関する労働衛生コンサルタントや労働安全コンサルタントなどとも相性が良く、使い方次第ではコンサルタントとして独立を目指すことも可能になるでしょう。技術士や社会保険労務士なども持っていればさらに独立が見えやすいです。
さらに健康に関する資格であることから医療系の資格とのダブルライセンスも有効で、特に化学について深く学習してきた薬剤師とはとても相性が良いと言えます。
ちなみに薬剤師であれば作業環境測定士試験が全科目免除となるため講習修了と登録だけで作業環境測定士有資格者になることができます。
他資格への影響
作業環境測定士であれば労働衛生コンサルタント試験の試験区分を「労働衛生工学」で受験した際「労働衛生一般」と「労働衛生関係法令」の科目が免除対象になります。
また衛生管理者免許のうち衛生工学衛生管理者免許は講習を受講することで取得できるものですが、作業環境測定士であれば受講条件を満たす上に、他の条件よりも短い期間の受講で取得することができます。
作業環境測定士になるには
試験に合格したあと講習を修了し、登録を受けることで作業環境測定士になることができます。受験資格がありますので確認が必要です。
試験の受験資格
基本的に科目免除対象者以外は労働衛生の実務経験を有している必要があります。
大学や高等専門学校などで理系の課程を修めていれば1年以上、高校等で理系を修めていたり理系以外の大卒などは3年以上、理系・工学系の技能士の1級・2級・単一級は1年以上、特に何も当てはまらない場合は8年以上の実務経験が必要です。
労働衛生の実務の内容は「労働環境衛生に関する調査又は研究」「作業条件、設備等の衛生上の改善」「衛生教育、健康診断その他労働者の健康保持のために必要な措置等」となっています。
具体的な受験資格は以下になり、公益財団法人 安全衛生技術試験協会のHPから引用させていただきました。
作業環境測定士試験の受験資格
- 大学(短大含む)・高等専門学校にて理科系統の正規の課程を修めて卒業し、1年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 高等学校・中等教育学校にて理科系統の正規の学科を修めて卒業し、3年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 大学(短大含む)・高等専門学校にて理科系統の正規の課程以外の課程を修めて卒業し、3年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 大学改革支援・学位授与機構に学士の学位を授与された者(理科系統の正規の課程以外の課程を修めた者)で、3年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 防衛大学校(理科系統以外の専門学科)を卒業した者で、3年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 専修学校の専門課程(修業年限2年以上かつ課程の修了に必要な総授業時間数が1700時間以上)の修了者(大学入学資格を有する者に限る)などで、その後大学等において大学改革支援・学位授与機構により学士の学位(理科系統以外)を授与されるのに必要な所定の単位を修得した者で、3年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 文部科学大臣の指定を受けた専修学校の専門課程(修業年限4年以上、理科系統以外の学科)を所定の日以後に修了した者など学校教育法施行規則第155条第1項に規定する者で、3年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 高等学校・中等教育学校において理科系統の正規の学科以外の学科を修めて卒業し、5年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 高等学校卒業程度認定試験に合格した者、外国において学校教育における12年の課程を修了した者など学校教育法施行規則第150条に規定する者で、5年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 大学改革支援・学位授与機構に学士の学位を授与された者(理科系統の正規の課程を修めた者)で、1年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 職業能力開発総合大学校(長期課程又は総合課程)、防衛大学校(理科系統の専門学科)、防衛医科大学校、水産大学校、海上保安大学校、気象大学校(大学部)又は国立看護大学校(看護学部看護学科)を卒業(修了)した者で、1年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 専修学校の専門課程(修業年限2年以上かつ課程の修了に必要な総授業時間数が1700時間以上)の修了者(大学入学資格を有する者に限る)などで、その後大学等において大学改革支援・学位授与機構により学士の学位(理科系統)を授与されるのに必要な所定の単位を修得した者で、1年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 文部科学大臣の指定を受けた専修学校の専門課程(修業年限4年以上、理科系統の学科)を所定の日以後に修了した者など学校教育法施行規則第155条第1項に規定する者で、1年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 応用課程の高度職業訓練(理科系統の専攻学科)又は専門課程若しくは特定専門課程の高度職業訓練(理科系統の専攻学科又は専門学科)を修了した者で、1年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 普通課程の普通職業訓練(理科系統の専攻学科又は専門学科)を修了した者で、3年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 専修訓練課程の普通職業訓練(理科系統の専門学科)を修了した者で、4年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 職業訓練の検定職種(技能士)のうち、一級、二級又は単一等級の技能検定(理学、工学の知識を必要とするものに限る)に合格した者で、1年以上労働衛生の実務経験を有するもの
- 8年以上労働衛生の実務経験を有する者
- 科目免除対象者
- 技術士試験第二次試験合格者
- 産業安全専門官、労働衛生専門官若しくは労働基準監督官又はその職務にあった者
試験の合格率から見た難易度
第一種の合格率は50%程度、第二種の合格率は30%程度になっています。
第二種の方が合格率は低くなっていますが難易度は第一種の方が高いです。
一見合格率は高めに見えますが、基本的に実務経験がなければ受験できない試験でこの合格率ですので決して簡単とは言えないでしょう。
難易度としては中程度と言えます。
試験の内容
第二種は「労働衛生一般」「労働衛生関係法令」「作業環境について行うデザイン・サンプリング」「作業環境について行う分析に関する概論」の4科目になります。
第一種は共通科目4科目+選択科目で構成されています。
共通科目は第二種の科目と同じで、選択科目は「有機溶剤」「鉱物性粉じん」「特定化学物質」「金属類」「放射性物質」です。
科目免除について
まず医師免許、歯科医師免許、薬剤師免許を受けた者については全科目免除となっています。
また作業環境測定士の国家試験には科目合格があり、一度合格した共通科目は2年間有効となり、申請により免除されます。
その他にも以下の条件を満たすことで免除があり、場合によっては全科目免除も可能になります。
ここまでに紹介した資格以外のものでは臨床検査技師、核燃料取扱主任者、原子炉主任技術者などの資格が免除対象になっていますよ。
大学・高等専門学校卒業、または高校・中等教育学校卒で環境計量士(濃度関係)の登録を受けた者で、厚生労働大臣の登録を受けた団体が行う試験免除講習を修了した者 | 共通科目全免除、選択科目「放射性物質」以外免除 |
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環境計量士(濃度関係)の登録を受けた者で上記以外の者 | 共通科目「衛生一般」「関係法令」選択科目「放射性物質」以外免除 |
診療放射線技師 | 共通科目全免除、選択科目は「放射性物質」が免除 |
技術士(化学部門、金属部門、応用理学部門) | 共通科目の「分析概論」が免除 |
技術士(衛生工学部門)で空気環境の測定の実務経験3年以上 | 共通科目の「分析概論」が免除、選択科目「放射性物質」以外免除 |
選任されている核燃料取扱主任者、試験研究用等原子炉主任技術者、発電用原子炉主任技術者、第一種放射線取扱主任者 | 共通科目全免除、選択科目「放射性物質」が免除 |
核燃料取扱主任者免状、原子炉主任技術者免状、第一種放射線取扱主任者免状を有する者で、放射性物質の濃度の測定の実務経験3年以上 | 共通科目全免除、選択科目「放射性物質」が免除 |
臨床検査技師で空気環境の測定の実務経験3年以上 | 共通科目全科目免除 |
臨床検査技師で大学にて作業環境、統計及び関係法令に関する授業科目を修めて卒業した者 | 共通科目全免除 |
臨床検査技師で上記2つの条件に当てはまらない者 | 共通科目の「衛生一般」「分析概論」が免除 |
衛生検査技師 | 共通科目「衛生一般」免除 |
専門課程の高度職業訓練(化学システム系環境化学科の訓練)を修了+技能照査に合格 | 共通科目「分析概論」が免除、選択科目「特化物」「金属類」「有機溶剤」が免除 |
化学分析科の職種に係る職業訓練指導員免許を受けた者 | 共通科目の「衛生一般」「分析概論」が免除 |
技能士で化学分析に係る一級又は二級 | 共通科目の「分析概論」が免除 |
公害防止管理者試験(騒音・振動以外)又は公害防止主任管理者試験に合格した者 | 共通科目の「分析概論」が免除 |
第一種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許を受けた者で、5年以上または3年以上労働衛生の実務経験があり、かつ厚生労働大臣の登録を受けた団体が行う試験免除講習を修了した者 | 共通科目の「衛生一般」「関係法令」が免除 |
労働衛生コンサルタント | 共通科目の「衛生一般」「関係法令」が免除 |
労働衛生専門官又は労働基準監督官として3年以上の実務経験 | 共通科目の「衛生一般」「関係法令」が免除 |
作業環境測定士試験に合格した者又は作業環境測定士として登録を受けた者 | 共通科目全科目免除 |
厚生労働大臣の登録を受けた大学・高等専門学校・職業能力開発短期大学校・職業能力開発大学校にて第二種作業環境測定士となるために必要な知識及び技能を付与する科目を修めて卒業または訓練を修了した者 | 共通科目全科目免除 |
まとめ
以上が作業環境測定士に関するまとめになります。
比較的需要が安定していることや有資格者が不足気味であることに加え、東日本大震災による原発事故から作業環境測定士に注目が集まっており、特に区分「放射性物質」は今後も需要が高くなりそうです。
少しでも参考になれば幸いです。