不動産鑑定士とは不動産の価格を評価することを独占業務とした国家資格です。
不動産鑑定士の特徴
たくさんある国家資格の中でも最難関とされるものは三大国家資格と呼ばれますがその3つが司法試験、公認会計士、そしてこの不動産鑑定士です。
不動産鑑定士の仕事内容
不動産鑑定士は不動産の価格を評価することが仕事です。
一般的な不動産の売買では近隣の実勢価格などが参考にされますが、不動産を賃貸借や担保にしたり、また相続や再開発などする場合は客観的で公正な評価価格が必要となり、こう言ったときに活躍するのが専門家である不動産鑑定士です。
また不動産鑑定士の特徴のひとつとして公的な鑑定依頼も多くあることがあげられます。
国土交通省が年に1度発表する公示地価や相続税のための路線価評価、固定資産税評価、都道府県が実施する地価調査など「官」の側から定期的な仕事と報酬を得ることができます。
司法書士や行政書士など独占業務を持つ国家資格でも独立開業となれば顧客開拓が不可欠となりますが不動産鑑定士の場合は公的な仕事が定期的にあるためある意味最も独立に向いている資格とも言えます。
そのため資格取得後は独立される方も多く、しかも一匹オオカミ状態で活躍している方も多いと言われています。
あまり個人レベルでは接触のない仕事ですので知らない方もそこそこ多いのですが重要な仕事を行っています。
活躍の場は広い
少しアバウトすぎるかもしれませんが不動産の証券化をなるべく簡単に表現してみます。
例えばアパートを運営している人がいて今すごくお金が要ります。ですがアパート自体を売ってお金を作ることは考えていません。
そこで家賃収入の利益を分配するからお金くださいと投資家の方に言い、お金を出してくれた投資家の方に証券を渡します。そしてアパートを運営して経費を差し引いて出た利益は証券を持つ投資家の方に分配します。
この証券は証券会社が管理していて、投資家が証券を売りたくなったらこの証券会社に売ることができます。そのアパートでの収入が良ければその証券がほしいと思う投資家も出てきます。その場合もこの証券会社で証券を買うことができます。このアパートの家賃収入の分配額がかなりよければ当然証券は高く売れます。
アパートを運営している人はお金が欲しかったのですがアパートを売ることは考えていなかったので、こうしてアパートと言う不動産を証券化することにより、売れないものを売れるようにしたのです。
こうした不動産の証券化は近年活発化しています。そしてこのとき不動産鑑定士の協力が不可欠となります。
お金を出す投資家は不動産の専門家でない場合が多く、投資の判断をするために専門的な見方を必要とします。そこで不動産鑑定士が公平な運用価値鑑定評価を行うことで投資家が判断できるようにします。
このような仕事もあるため不動産鑑定士を必要とする職種は不動産業界だけでなく銀行や金融系、証券業界までたくさんあるのです。
平均年収は600万~700万円
他の三大国家資格に比べると少し年収は下がりますが比較的収入は高く、しかも不動産鑑定士はもっとも”食べていける”資格1位であると言われています。
公認会計士はリーマン・ショックに大きく左右され待機合格者問題がテレビでも報道されましたし、弁護士は実力主義の社会になっていますが、不動産鑑定士の仕事内容は上記で説明した通り、景気の好不況に左右される仕事ではありません。
独立開業にも有利であるため高収入には確実につながっていく資格であると言えます。
他資格への影響
不動産鑑定士の資格が影響を及ぼす他資格の数は当サイトで紹介している分だけでも7資格もあります。
まず第1に不動産鑑定士有資格者はおなじく三大国家資格である公認会計士試験の論文式筆記試験の経済学or民法が免除されます。
第2に税理士試験の受験資格のひとつに「不動産鑑定士の業務に2年以上従事した者」とあります。
第3に不動産鑑定士試験合格者は社会保険労務士試験の受験資格を満たします。
第4に中小企業診断士試験の1日目の経済学・経済政策の科目が不動産鑑定士有資格者は免除対象となっています。
第5にファイナンシャルプランナーの資格は上位のものになると実務経験が必要になりますが例として「不動産鑑定士として資産に関する相談業務に従事している方」とありますのでご参考までに。
第6に民間資格の公認 不動産コンサルティングマスターになるための不動産コンサルティング技能試験の受験資格は不動産鑑定士・宅地建物取引士・一級建築士に限られます。この資格は民間資格ですが国土交通大臣認定資格になります。
最後に土地区画整理法で定めるところに従って行われる事業の施行もしくは推進に関係する実務経験が2年以上ある不動産鑑定士・不動産鑑定士補は土地区画整理士技術検定の学科試験の受験資格を満たします。
不動産鑑定士になるには
国家試験に合格し、実務修習を経て登録することで不動産鑑定士になれます。国家資格に受験資格はなく誰でも受験できます。
最終的合格率は2~3%
以前の不動産鑑定士試験は最終的に不動産鑑定士となるまで4年もかかったのですが、2006年度から大幅に改正され、試験合格後1年程度の実務修習に参加して修了考査に合格すれば登録できるシステムになりました。
試験は短答式試験と論文式試験ですが、短答式に合格しなければ論文式を受験することができません。
短答式試験の合格率はだいたい25%程度、論文式試験の合格率はおよそ10%、最終的な合格率は2%程度と超難関試験になっています。なお実務修習修了考査の合格率は90%と高いです。
試験の内容
短答式試験はそれほど難しくないと言われており、まず短答式で基礎的な知識のない人を振り落とし、論文式試験でじっくりと思考力・応用力を判定すると言ったスタイルの試験になっています。
短答式試験
不動産に関する行政法規、不動産の鑑定評価に関する理論が問われます。
短答式試験はさほど難しくないと言われてはいますが、行政法規の種類が多岐に渡るため最初のハードルになってきます。
短答式試験に合格すると論文式試験を受験することができますが有効期間は3年です。最初の論文式試験は短答式試験から3か月後に行われるため、最初から両方勉強しておく必要があります。
論文式試験
民法、経済学、会計学、不動産の鑑定評価に関する理論(演習問題と論文問題の2種類)が問われます。
法律だけでなく会計学や経済学まで問われること、また実務で必要となる「不動産鑑定評価理論」はかなり特殊な科目であるため受験者のレベルはとても高いです。
論文式試験まで合格すると一生有効なため、この後の実務修習はいつでも受けることができます。
まとめ
以上が不動産鑑定士についてのまとめになります。
試験の改正によって不動産鑑定士になるまでの時間は大幅に短縮されましたが、非常に合格率の低い超難関資格であることには変わりありません。
※ちなみに2006年の試験改正前は「不動産鑑定士補」と言う不動産鑑定士試験の一部に合格し登録を受けた者に与えられる資格が存在したのですが現在は廃止されています。
しかし試験合格後のその後は、景気に左右されることのない安定して一定の高収入を得られる可能性が高い資格であることは非常に魅力的です。
少しでも参考になれば幸いです。