海技士とは大型船舶に船長、機関長、通信長、船舶職員として乗務するために持っていなければならない国家資格であり、これらの仕事は海技士の独占業務になります。
海技士の種類
資格が必要な船舶職員は大きくわけて3種類、資格自体は大きくわけて4種類になります。
大型船舶の職員
大型船舶を動かすにあたって必要な職員は大きく3つにわかれます。
甲板部(船長・航海士)
機関部(機関長・機関士)
無線部(通信長・通信士)
甲板部は船の操縦や船の手入れ、出入港時の諸作業などを行います。
機関部はエンジン、発電機、冷凍機、クレーン、ウインチなど船内にあるさまざまな機器の管理、点検を行います。
無線部は地上との無線交信や気象通報の受信などの情報収集や、インマルサット無線設備などを通して他の船舶や地上と交信します。
海技士は大きくわけて4種類
海技士には大きくわけると4つに分かれており、それぞれ級が存在します。
海技士(航海)1~6級
海技士(機関)1~6級
海技士(通信)1~3級
海技士(電子通信)1~4級
甲板部で活躍するのが海技士(航海)、機関部で活躍するのが海技士(機関)、無線部で活躍するのが海技士(通信)・海技士(電子通信)になります。
通常大型船舶に甲板部は必ず存在するため海技士(航海)の有資格者が必須となります。
機関部がある場合は海技士(機関)の有資格者が必要になり、無線部がある場合は海技士(通信)・海技士(電子通信)の有資格者が必要になります。
また航海の1つとして船橋当直3級海技士と言う資格や、機関の1つとして機関当直3級海技士、内燃機関海技士と言う資格も存在します。
船橋当直3級海技士は運航士とも呼ばれる甲板部員であり、当直勤務体制で船の安全を監視します。
機関当直3級海技士は安全に航海できるよう交替勤務で24時間体制を敷き、船の推進機関や操舵装置とその遠隔操作が適正に作動しているか点検、監視します。
内燃機関海技士はガソリン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関を備えた船舶でそれらの操作や手入れを担当します。外燃機関は扱わないため1級はありません。
海技士の特徴
海技士の資格を取得することでさまざまなメリットがあります。
高収入!年収1000万円も夢じゃない
海技士の仕事は危険を伴う仕事ですので待遇が手厚く、高収入であると言う強みがあります。
大卒でなくとも日本人の平均年収を超える年収500万円以上の方も多く、船長レベルになれば年収1000万円以上も狙えます。
ただし仕事は危険を伴い、不規則になりがちとハードですので覚悟が必要です。
海技士は貿易会社や海洋関連会社など、船舶に関するさまざまな企業に就職することが可能です。
貨物船、タンカー、客船、漁船、作業船などで活躍することになります。
資格は一生モノ!需要も高い
海技士有資格者は決して多くはなく、人材不足と言われているため、需要の高い資格になります。
また海技士有資格者の14%が60歳以上であると言われており、もっと高齢になっても船舶職員として活躍されている方もいらっしゃると言われています。
海技士の免許は5年に1回更新する必要はありますが一生モノの資格です。
ただし近年人件費の安い外国人を雇ったり、また日本人職員しか乗ることのできなかった日本国籍戦にも船長・機関長以外は外国人を登用できる制度ができたりしている傾向にあります。
一生モノの資格ではありますが差をつけるためにもできるだけ上級を目指していきたいです。
他資格への影響
海技士の資格があれば社会保険労務士試験の受験資格を満たします。
各級海技士はもちろん、3級船橋当直海技士・3級機関当直海技士・各級内燃機関海技士もすべて受験資格を満たすと明記されています。
そして3級海技士(航海)以上の資格を持ち、諸々の条件を満たすことで水先人(水先案内人)試験の受験資格を満たします。
また1級・2級・3級の海技士(機関)有資格者は消防設備点検資格者の受講資格を満たします。
最後に海技士(機関)の資格はボイラー技士の資格に対する影響がたくさんあります。
海技士(機関)の1級・2級・3級免許を受けていると一級ボイラー技士試験の受験資格を満たし、また海技士(機関)の1級・2級免許を受けていると特級ボイラー技士試験の受験資格を満たします。
またボイラー技士は試験に合格したあと免許を受ける必要がありますが、二級ボイラー技士の免許交付要件に「海技士(機関)3級以上の免許を受けた者」「海技士(機関4,5級)の免許を有する者で、伝熱面積の合計が25m2以上のボイラーの取扱経験者」とあります。
海技士になるには
種類や級によって異なりますが筆記試験・口述試験と身体検査に合格し、その後講習を受けることで海技士の免許を取得できます。
船舶職員養成施設の教育課程を修了している方は筆記試験が免除となります。
受験資格の乗船履歴
海技士試験を受験するには一定の年齢に達していることと乗船履歴があることが必要になります。乗船履歴とは船における実務経験と言った感じと考えて差し支えないと思います。
船舶職員として船に乗るには海技士免許が必要なのにどうすればよいのかと言うと「職員」ではなく「部員」は海技士免許が必要なく、部員として船舶職員を補助する業務を積むことが乗船履歴として認められているため、ここからスタートする方もいます。
他には船員としての業務経験が全くない方を対象にした短期集中の養成教育を受けると言う方法もあります。
この養成教育は座学2.5カ月+乗船実習2ヵ月の課程になり、その後船社にて6か月の乗船履歴を積むことで6級海技士(航海・機関)の受験資格を得られます。そしてこの場合、筆記試験が免除になると言う特権があります。
この養成教育を行っているのは一般財団法人尾道海技学院(広島県)、JEIS西日本九州海技学院(熊本県)のみになります。かつては独立行政法人海技教育機構(神奈川県)でも行われていましたが現在休止となっております。
海技士(航海)の受験資格
6級海技士(航海)に必要な乗船履歴は総トン数5トン以上の船舶で船舶の運航に関する業務を2年以上行っていると言う乗船履歴が必要になります。
級によって必要な船舶の重さや業務内容が異なります。
5級・4級はそれぞれ定められている業務を1年or3年以上、船橋当直3級海技士も同様に1年or1年6か月or3年以上、3級は1年or2年or3年以上、2級は1年or2年以上、1級は1年or2年or4年以上の乗船履歴が必要になります。
また受験資格を満たしていなくても3級~6級は筆記試験を受験することは可能です。筆記試験に合格し、乗船履歴を満たしてその後身体検査・口述試験を受けて免許を取得するルートもあります。
年齢制限はありませんが、免許取得年齢は18歳以上になっています。
海技士(機関)の受験資格
6級海技士(機関)を受験する際に必要な乗船履歴は総トン数5トン以上の船舶で機関の運転に関する業務を2年以上行っていることになります。
航海と同様に級によって必要な船舶の重さや業務内容が異なります。
それぞれ定められている業務を5級・4級は1年or3年以上、機関当直3級海技士は1年or1年半or3年以上、3級は1年or2年or3年以上、2級は1年or2年以上、1級は1年or2年or4年以上の乗船履歴が受験資格になります。
こちらも航海と同様に、受験資格を満たしていなくても3級~6級は筆記試験を受験することができ、そして免許取得年齢は18歳以上になります。
海技士(通信)の受験資格
通信は航海や機関と違い、受験資格を満たしていなければ筆記試験も受験することができません。
受験資格は以下の3つ。
- 6か月以上の乗船履歴を持っていること
- 無線従事者免許を受け、かつ船舶局無線従事者証明を受有していること
- 17歳9か月以上の年齢であること
船舶局無線従事者証明の対象となる無線従事者資格は、総合無線通信士(1~3級)・海上無線通信士(1~3級)・海上特殊無線技士(1級)です。
海技士(電子通信)の受験資格
電子通信も通信と同様に受験資格を満たしていなければ筆記試験も受験することができません。
受験資格は通信と同じです。
- 6か月以上の乗船履歴を持っていること
- 無線従事者免許を受け、かつ船舶局無線従事者証明を受有していること
- 17歳9か月以上の年齢であること
試験の内容
試験は筆記試験+身体検査+口述試験の3段階です。
先述した通り、船舶職員養成施設の教育課程を修了している方は筆記試験が免除となります。
また6級に口述試験はありません。
航海の筆記試験の内容は航海に関する科目、運用に関する科目、法規に関する科目が問われます。船橋当直3級海技士は科目に英語もあります。
機関・機関当直3級海技士・内燃機関海技士は機関に関する科目や執務一般に関する科目の他、1級~3級は科目に英語もあります。
通信・電子通信は船舶知識、気象知識、緊急時の知識が問われます。
免許には更新が必要です
海技士免許はの有効期間は5年です。
有効期間を過ぎても仕事を続けたい場合は手続きを経て更新する必要があります。
まとめ
以上が海技士に関する大まかなまとめになります。
危険が伴う仕事ですが海が好き、航海が好きな人にとっては非常にやりがいのある仕事になるでしょうし、高収入であることも魅力的です。
若いうちから航海士を目指そうと考えていらっしゃる方はぜひ船舶職員養成施設の教育課程のある商船系の高校や水産高校、海上技術短期大学、水産大学や海上保安大学校への進学を考えてみてください。