ITストラテジスト試験とは情報処理技術者試験の1つで高度情報処理技術者に分類される名称独占の国家資格です。
高度IT人材として確立した専門分野をもち、情報技術を活用して改革・高度化・最適化するための策定・提案・推進する者であることを証明します。
ITストラテジスト試験の特徴
英語名はInformation Technology Strategist Examinationであり、略号はSTになります。
そして旧試験であるシステムアナリスト試験と上級システムアドミニストレータ試験を前身とした資格になります。
ITストラテジスト試験とは
まずストラテジスト(Strategist)とは英語をそのまま訳すると「戦略家」「策士」と言う意味になります。
そして金融経済用語・ビジネス用語としての「ストラテジスト」は投資戦略を考える専門家のことを指します。相場の流れを読み、効率的な投資戦略を投資家に提供する役割を担います。
ITストラテジストはIT業界における「ストラテジスト」と言うことになり、役割としては「ITコンサルタント」としての技術も持つITエンジニアと言った表現が伝わりやすいかなと思います。
情報処理技術者試験の試験機関が設置されているIPAのホームページによると以下のような方に最適の資格になります。
経営戦略に基づいてIT戦略を策定し、ITを高度に活用した事業革新、業務改革、及び競争優位を獲得する製品・サービスの創出を企画・推進して、ビジネスを成功に導くCIOやCTO、ITコンサルタントを目指す方に最適です。
就職・転職に強い!
現行の情報処理技術者試験はスキルレベルが1~4に設定されていますがITストラテジスト試験は最高レベルであるレベル4であり、情報処理技術者試験の中でも高度情報処理技術者に分類される資格です。
さらに高度情報処理技術者の中でもITストラテジスト試験はプロジェクトマネージャ試験、システム監査技術者試験と並んで最難関と言われる試験です。
就職・転職にはかなり強いと言えますし、また情報処理技術者試験の中でもITストラテジスト試験は知名度が高い方なため、IT企業だけでなく一般企業でもスペシャリストとして活躍できるでしょう。
ところで2015年にシスコシステムズのジョン・チェンバース氏がCEOとして最後のCisco Liveで「10年後までに今ある企業の4割は姿を消す」と発言したことをご存知でしょうか?
これに対して経済産業省の石川正樹審議官はITを戦略的に活用できない企業はその4割にまわってしまうと発言しています。
チェンバース氏は「戦略」に焦点を合わせ、迅速な変革を呼びかけましたが、日本は経営者のITに対する意識が非常に低い国なのでかなり危なっかしいと言うわけです。
ITストラテジスト試験はその「戦略」を焦点にあてたIT系資格であり、需要は今後どんどん高くなっていく可能性があります。大企業への就職も見えてくるかもしれません。
他資格への影響
高度情報処理技術者に分類されるITストラテジスト試験はさまざまな資格に影響してきます。
まずITストラテジスト試験有資格者は中小企業診断士試験の経営情報システムが免除対象となります。
またITストラテジスト試験に合格すると社会保険労務士試験の受験資格が得られます。
他には弁理士試験では論文式筆記試験の選択科目が免除となります。
ITストラテジスト試験の資格を取得するには
試験に合格すればOKです。受験資格は特になく誰でも受験できます。
合格率は10~15%
高度情報処理技術者の合格率はだいたい10%前後になり、ITストラテジスト試験も例にもれず、合格率は決して高くはありません。
ちなみに平成28年度は14.0%でした。
試験の内容
試験は1日で終わりますが午前1・午前2・午後1・午後2と4回にわけられています。
午前1と午前2はマークシート形式、午後1は記述形式、午後2は論文形式の試験になっています。
午前1の試験内容
ITに関する基礎的なことが問われ、難易度としては応用情報技術者試験(レベル3)程度の問題になります。
ITストラテジスト試験を受験できるだけの知識がある方にとってはさほど難しくはありませんが、この午前1に落ちると問答無用で不合格となるので注意が必要です。基準点(60%)に達していなければ以降の試験は採点されなくなります。
2年以内に応用情報技術者試験・他の高度情報技術者試験に合格した方は午前1が免除されます。また同じく2年以内に他の高度情報処理技術者試験の午前1に基準点以上を得点できた場合も免除対象となります。
午前2の試験内容
出題範囲としては午前1とほぼ同じですがストラテジ系の問題が中心となります。
ここでも基準点(60%)に達しなかった場合は不合格となり、以降の試験は採点されません。
午後1の試験内容
ITストラテジスト試験の受験者の多くが苦労するのはここからになります。4題出題された中から2題を選択して解答する記述形式の試験です。
ここでも基準点に達しなかった場合は不合格となり、以降は採点されません。
午後2の試験内容
ITストラテジスト試験の最難関と言われる午後2の論文形式の試験で十分な事前準備が必要になります。3題出題され1題を選択し、原稿用紙に2000~3000字程度記入していきます。
この結果はA・B・C・Dにランクがつけられ、Aランクで合格、それ以外は不合格となります。
まとめ
以上がITストラテジスト試験の大まかなまとめになります。
今後企業が生き残っていく上でも重要な役割を担う技術を身に着けていることの証明となるこの資格は非常に将来性のある資格と言えますね。
ちなみにITストラテジストは医師や弁護士、公認会計士などと並ぶ「専門的知識等を有する労働者」に指定されている専門職になる資格なんですよ。
少しでも参考になれば幸いです。