陸上無線技術士とは無線従事者の一種で、テレビやラジオなどの放送局やタクシー無線、電気通信会社など、陸上における無線局の技術操作を行う国家資格であり、これら無線局における必置資格と言える資格です。
陸上無線技術士の特徴
略称は「陸技」になります。一級は一陸技、二級は二陸技と表現されることもあります。
陸上無線技術士とは
陸上無線技術士はテレビやラジオなど私たちにとって身近な無線局の技術操作を行うことのできる資格で、扱える範囲によって資格がわかれています。
第一級陸上無線技術士と第二級陸上無線技術士とがあり、一級が上位資格になります。
第一級陸上無線技術士は無線設備の技術操作における最高の資格であり、無線従事者の中でも第一級総合無線通信士と並ぶ最高峰の資格になります。
また第一級陸上無線技術士資格と第一級総合無線通信士資格を持っていればすべての無線従事者資格の操作範囲を包含します。
また無線従事者免許を持たないものが無線を扱うには主任無線従事者の監督下でなければならなく、この主任無線従事者はアマチュア無線技士以外の無線従事者から選任されるため、もちろん陸上無線技術士はその対象です。
無資格者が無線を扱うには法律上、主任無線従事者が必ず必要になるため、陸上無線技術士は必置資格になることもあります。
陸上無線技術士の操作範囲
第一級陸上無線技術士はアマチュア無線局の操作を除く無線設備の技術操作が行えます。
- 無線局の技術操作
- 第四級アマチュア無線技士の操作
第二級陸上無線技術士は無線設備の技術操作を行うことができますが周波数、空中線電力に制限があります。
- 空中線電力2kW以下の無線設備(テレビジョン放送局の無線設備を除く)
- テレビジョン放送局の空中線電力500W以下の無線設備
- レーダーで①以外のもの
- ①・③の無線設備以外の無線航行局の無線設備で960MHz以上の周波数の電波
- 第四級アマチュア無線技士の操作
就職先が幅広い
無線従事者の中でも陸上無線技術士はおそらく最も就職先が幅広くなります。
NHKやその他テレビ局、電気通信事業会社、国土交通省航空局、海上保安庁に就職できる可能性もあります。
ただしテレビ局自体、求人が多いわけではありませんし、社内で無線従事者を育成していますので過度な期待は禁物です。
とは言え簡単に取得できる資格ではないため、陸上無線技術士を取得している方の評価は高く、さまざまな場所で就職に有利に働く可能性があります。
他資格への影響
まず他の無線従事者試験に影響します。
第一級・二級陸上無線技術士を持っていると総合無線通信士試験(1~3級)、海上無線通信士試験(1~4級)、海上特殊無線技士試験(1~3級)、航空無線通信士試験、航空特殊無線技士試験の一部の科目が免除対象になります。
無線従事者以外の資格への影響もあります。
まず第一級陸上無線技術士の資格がある方は社会保険労務士試験の受験資格を満たします。
また第一級陸上無線技術士であれば電気通信主任技術者の伝送交換主任技術者試験の電気通信システム・専門的能力の2科目が免除対象となり、同じく電気通信主任技術者の線路主任技術者試験の電気通信システムの科目が免除対象です。
そして第二級陸上無線技術士であれば電気通信主任技術者の伝送交換主任技術者・線路主任技術者試験の電気通信システムの科目が免除対象となっています。
他には一級・二級ともに甲種消防設備士試験の受験資格を満たします。
陸上無線技術士になるには
基本的には試験に合格すればOKです。受験資格は特になく誰でも受験できます。
また認定講習課程を修了することで試験に合格しなくても取得できる方法もあります。
合格率は20%前後
陸上無線技術士試験の合格率は一級・二級ともにだいたい20%前後と考えて差し支えないと思います。
ちなみに平成28年度の合格率は一陸技で25.7%、二陸技で24.3%でした。
同じく無線従事者で最高峰の総合無線通信士試験の合格率に比べるとだいぶ合格率が高く見えますが、決して簡単な試験ではありません。
試験の内容
第一級・第二級陸上無線技術士の試験科目は共に、無線工学の基礎、無線工学A・B、法規になります。
科目が少なく見えますが無線工学の基礎、無線工学A・Bの難易度は無線従事者試験の中で最も難しいと言われています。
科目免除について
陸上無線技術士試験には科目免除制度があり、全科目一度に合格しなくてもよく、合格点を取った科目は3年間有効となります。
他にも様々な免除があるので確認しておきましょう。なおこれら免除は申請する必要があります。
他の無線者従事資格による科目免除
一級総合無線通信士を持っていると一級陸上無線技術士試験の法規が免除、二級総合無線通信士を持っていると二級陸上無線技術士の法規が免除対象になります。
一級海上無線通信士を持っていると二級陸上無線技術士試験の無線工学の基礎が免除対象です。
また一級総合無線通信士としての業務経歴が3年以上あれば一級陸上無線技術士試験の無線工学の基礎と法規が免除対象になり、二級総合無線通信士としての業務経歴が3年以上あれば二級陸上無線技術士試験の無線工学の基礎と法規が免除対象になります。
また二級陸上無線技術士としての業務経歴が3年以上あると一級陸上無線技術士試験の無線工学の基礎と法規が免除対象になります。
無線従事者以外の資格による科目免除
伝送交換主任技術者は一級・二級陸上無線技術士試験の無線工学の基礎と無線工学Aが免除対象です。
また線路主任技術者は一級・二級陸上無線技術士試験の無線工学の基礎が免除対象です。
認定学校卒業者の免除
総務大臣が指定した学校その他の教育施設を卒業すると、卒業の日から3年以内は陸上無線技術士試験一部の科目が免除対象です。
認定講習課程を修了して取得することも可
すでに所定の無線従事者資格を持っている場合は、一定の業務経歴を満たすことで「認定講習課程」を受けることができます。
この認定講習課程を修了することで国家試験に合格することなく、他の無線従事者資格を取得することができます。
第一級総合無線通信士・二級陸上無線技術士として無線局の無線設備の操作に7年以上従事し、認定講習課程を修了すれば第一級陸上無線技術士免許を取得できます。
また第二級総合無線通信士として無線局の無線設備の操作に7年以上従事し、認定講習課程を修了すれば第二級陸上無線技術士免許を取得できます。
ともに無線局はアマチュア局を除きます。
まとめ
以上が陸上無線技術士に関するまとめになります。
陸上無線技術士は無線従事者の中でも最高峰であり、活躍の場が最も広くなる資格のひとつですので、場合によっては国家公務員を目指すこともできる資格です。
少しでも参考になれば幸いです。