建築士とは、建築物の設計や施工監理ができる唯一の国家資格であり、これらは建築士の独占業務になります。
建築士の特徴
建築士には一級・二級・木造の3種類あり、二級・木造は設計できる制限が定められています。
一級建築士や二級建築士の違い
一級建築士と言う言葉は多くの方が耳にしたことがあると思いますが、他にも二級建築士・木造建築士と呼ばれる資格があります。
少し大雑把にそれぞれの建築士が扱える範囲について解説します。
一級建築士
延床面積500㎡を超える学校や病院、百貨店などの設計・工事監理などを行うことができます。延床面積(のべゆかめんせき)とは建築物の各階の床面積を合計したものです。
また一定規模以上の建築物の法適合確認を行う、さらに上位資格となるものもあります。
- 構造設計一級建築士
- 設備設計一級建築士
一級建築士として5年以上の構造設計または設備設計の実務経験を持ち、講習を修了して交付を受けたものがこれら「構造設計一級建築士」「設備設計一級建築士」になり、それぞれ構造設計、設備設計のスペシャリストになります。
二級建築士
延床面積500㎡未満の学校や病院、百貨店などの設計・工事監理や鉄筋コンクリートなどでは高さ13m以下で延床面積が300㎡までの建築物など、木造住宅や小規模な鉄筋コンクリート造などの建物を扱える建築士です。
もちろん最上級である一級建築士はこの範囲も扱うことができます。
木造建築士
昭和25年から存在する長い建築士の歴史の中で、木造建築士は昭和59年から新しく誕生した資格であり、伝統的木造建築物の施工品質の確保と向上を目的とするやや特殊な資格です。
2階建てで延床面積が300㎡までの木造建築物の設計・工事監理ができます。
木造建築士はコンクリート造の建築物などを扱うことはできません。
平均年収は400万円~600万円
一級建築士はおよそ600万円~700万円、二級建築士はおよそ400万円~600万円程度と見られているようです。
就職する場合はハウスメーカーや建築会社などが中心となりますが、関連インテリアプランナーへの転身も考えられます。
独立も可能
日本では建売住宅が多く、建築家に設計を依頼して建物を建てようと言う方はまだまだ少ないと言えます。
そのため顧客開拓がなかなか難しく、地域の不動産業者や工務店などとのコネクションが重要と言えます。
超有名建築家になることができれば高収入も見えてくるでしょう。
福祉住環境コーディネーターやインテリアコーディネーターなどの民間資格をプラス資格として持っているといいですね。
他資格への影響
建築士の資格はかなり多くの国家資格・民間資格に影響があります。影響を与えるものの多くが一級建築士です。
第1に、一級建築士は弁理士試験において論文式筆記試験の選択科目が免除対象になっています。
第2に、一級建築士は社会保険労務士試験の受験資格を得られます。
第3に、一級建築士試験に合格した方は労働安全コンサルタント試験の受験資格を実務経験なしで満たします。
第4に、一級建築士は労働衛生コンサルタント試験の受験資格を満たします。
第5に、一級建築士であれば2級建築施工管理技士試験の学科試験が免除になります。1級建築施工管理技士試験についても受験資格を満たしていれば学科試験が免除です。
第6に、一級建築士は建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)の免状を得るための講習の受講資格を実務経験なしで満たせます。
第7に、一級建築士・二級建築士は消防設備士甲種の受験資格を得られたり、消防設備点検資格者の受講資格を得られたりと言った影響があります。
第8として4つの資格を挙げます。そもそも特定建築物調査員、建築設備検査員、昇降機等検査員、防火設備検査員の行う調査や検査、報告業務を一級建築士・二級建築士も行うことができるのですが、このうち特定建築物調査員、建築設備検査員、昇降機等検査員の講習の受講(聴講)をすることが可能になります。
第9に一級建築士で1年以上の防火管理の実務経験があれば防火管理者の資格がなくても甲種防火管理者の資格を有する者として認められます。
第10に一級建築士・二級建築士であれば民間資格のマンション維持修繕技術者試験の受験資格を満たします。
第11として、同じく民間資格の公認 不動産コンサルティングマスターになるための不動産コンサルティング技能試験を受験できるのは一級建築士・宅地建物取引士・不動産鑑定士に限られます。この資格は民間資格ではりますが国土交通大臣認定資格になります。
建築士になるには
国家試験に合格し、登録を済ませれば建築士になることができますが、まず国家試験の受験資格が非常に厳しいため、あらかじめ確認しておく必要があります。
受験資格
建築士の資格は学歴によって細かに実務経験が定められているため、畑違いの社会人が簡単に挑戦できる資格ではありません。
最も受験しやすい二級建築士と木造建築士であっても建築課程を卒業すれば実務経験が必要ないと言うだけで受験するために大学や専門学校を卒業することが必要になります。
ただすでに建築業界で働いている人にとっては取りやすい資格であり、建築系の大学等の卒業は必要なく、実務経験7年以上で二級・木造の受験資格を得られます。
とは言え実務経験のみで受験資格を満たすには平成20年11月28日から「設計・工事監理に必要な知識・能力を得られる実務」に限定したものに変更されましたので注意が必要です。具体的な実務経験の内容としては建築物の工事監理、建築工事の指導監督、工事の施工の技術上の管理などになります。
一級建築士は一定の学歴・一定の有資格者が実務経験を積むことで受験資格を得ることができますが実務の年数はそれぞれ異なります。
畑違いの社会人で挑戦される方はまず専門学校に通い、二級建築士または木造建築士から取得するのが一般的です。
理系の学校は自分には無理だと思う方もいるかもしれませんが、建築士は文系の方でも目指すことのできる数少ない技術系の資格です。美術大学などにも建築学科はありますし、授業にはデッサンの実技も含まれています。
二級建築士・木造建築士の受験資格
- 大学・短大・高等専門学校の建築課程を卒業した者
- 大学・短大・高等専門学校の土木課程を卒業し1年以上の実務経験がある者
- 高校の建築課程を卒業し3年以上の実務経験がある者
- 高校の土木課程を卒業し3年以上の実務経験がある者
- 建築に関する実務経験が7年以上ある者
- 建築設備士有資格者
一級建築士の受験資格
- 大学の建築課程・土木課程を卒業し2年以上の実務経験がある者
- 3年制の短大(夜間を除く)の建築課程・土木課程を卒業し3年以上の実務経験がある者
- 2年制の短大・高等専門学校の建築課程・土木課程を卒業し4年以上の実務経験がある者
- 二級建築士で実務経験が4年以上ある者
- 建築設備士で実務経験が4年以上ある者
合格率の低い難関資格
一級建築士の合格率はおよそ12%程度、二級建築士の合格率はおよそ20%弱です。
受験資格に学歴+実務経験が必要とされる資格の中では異例の厳しさとも言えますが、これは設計や監理にミスがあれば多くの方の人命に関わってくるためです。
試験も5科目125問を6時間半で解かなければなりません。1問あたりの時間はわずか3分であり、短時間に正解を見分ける正確な知識が必要とされています。
なおかつては4科目を計6時間で回答しなければならず、1問あたりの時間は4分と、このときでも十分厳しかったのですが、2005年に発覚した耐震強度偽装事件を受けて構造と法規について重点を置くようになり、より厳しくなりました。
定期講習の義務
同じく2005年に発覚した耐震強度偽装事件を受けて建築士法が改正され、建築事務所に属する建築士には3年ごとの定期講習が義務付けられることになりました。
建築技術普及センターの建築士定期講習の受講手数料は12,960円(平成29年度)となっています。
まとめ
以上が一級建築士・二級建築士・木造建築士のなり方、なってからの流れになります。
資格を取得するまでに一定の学歴が必要になることがネックになる方も多いかもしれませんが、畑違いの社会人が一念発起して夜間の専門学校に通って二級建築士を目指すと言う例もあります。
建築に興味がある、インテリアコーディネーターの仕事がしたいと理由はさまざまですが、建築物の設計・施工監理を独占業務とする国家資格「建築士」にはそれだけの価値も名誉もあり、取得することで一生ものになることは間違いありません。