水先人(みずさきにん)とは、船長を補助して船舶の安全な出入港等を行う業務独占の国家資格です。
日本では水先案内人(みずさきあんないにん)と呼ばれることも多いです。
水先人(水先案内人)の特徴
英語名はPilotになり、日本水先人会連合会では水先人をパイロットと表記しています。
水先区・強制水先区で必要!
外航船が多く出入りする港・湾・海峡・内海は「水先区」に設定されており、現在日本には35か所の水先区があります。(2018年3月2日現在)
水先区では多数の船舶が行き交うため、その環境に慣れていない外航船などの船長を補助して安全に導く必要があり、その専門家が水先人になり、これが水先人の独占業務になります。
また35か所の水先区の中には地形や水路が複雑であったり、特に船舶の混雑がするところであったりするところもあり、そう言った水先区は「強制水先区」に設定されており、現在日本では11か所の強制水先区が存在します。(2018年3月2日現在)
この強制水先区では一定基準以上の船舶に対して水先人を乗船させるよう義務付けられています。
乗船する船の多くが外国船になりますので当然水先人には英会話能力が必要になり、TOEICのスコアが500点程度の能力が必要と言われています。
水先人免許は1級・2級・3級の3種類存在し、水先人の業務を行える船の大きさに違いがあり、3級<2級<1級の順に大きな船に乗れるようになります。
3級は上限2万トンまでの船舶(危険物積載船は不可)、2級は上限5万トンまでの船舶(危険物積載船は上限2万総トンまで)、1級はすべての船舶に乗船できるようになっています。
高収入!かつ60歳を過ぎても働ける仕事!
特殊な職業である水先人の平均年収は800万円以上とかなり高く、1000万円以上稼ぐ方の割合もそれなりに高い仕事になっています。
持っている免許の級が高いほど年収も高くなり、東京湾など水先人の仕事がかなり多くなるところでの1級水先人の年収は2000万円以上とも言われています。
またかつては水先人になるには総トン数3000トン以上の船舶で3年以上船長を務めた経験が必要だったため、水先人として仕事を行うにはどうしても50代以上になる傾向がありましたが平成19年に新制度がスタートし、船長経験がなくてもOKとなりました。
そのため現在は3級水先人においては若い方でも目指すことができるようになっています。2011年に誕生した日本初の女性水先人は26歳と言う若さです。
また水先人会の会則で原則72歳が定年となっていますので、今後変更がなければかなり長い期間働くことができる一生モノの資格です。
他資格への影響
どの級でも水先人の免許を持っていれば社会保険労務士試験の受験資格を満たします。
水先人(水先案内人)になるには
試験に合格すればOKです。受験資格がありますので確認してください。
水先人の受験資格
水先人になるには1級・2級・3級ともに3級海技士(航海)以上の資格が必要になります。
どの級も基本的には「3級海技士(航海)」⇒「実務経験など」⇒「登録水先人養成施設」と言った流れで受験資格を満たせます。
登録水先人養成施設は東京都に1校、兵庫県に2校(2018年3月7日現在)しかありません。
3級水先人の受験資格
まず3級海技士(航海)以上の免許を取得します。
その後、総トン数1000トン以上の船舶で1年以上の船長または航海士としての乗船経験、または練習船による1年以上の実習を受けた経験を満たします。
上記を満たした上で登録水先人養成施設にて2年6か月の3級水先人養成課程を修了することで3級水先人試験の受験資格を満たします。
2級水先人の受験資格
2級水先人試験の受験資格を満たす方法は2通りあります。
まず1つ目は、3級海技士(航海)以上の海技士免許を取得し、総トン数3000トン以上の船舶で2年以上の船長または一等航海士としての乗船経験があり、その後登録水先人養成施設にて1年6か月の2級水先人養成課程を修了することで受験資格を満たせます。
2つ目は、3級水先人として2年以上の実務経験があり、その後登録水先人養成施設にて6か月の2級水先人養成課程を修了することで受験資格を満たせます。
1級水先人の受験資格
1級も2級と同様に2通りあります。
まず1つ目は、3級海技士(航海)以上の海技士免許があり、総トン数3000トン以上の船舶で2年以上船長として乗船した経験があり、その後登録水先人養成施設にて9か月の1級水先人養成課程を修了することで受験資格を満たせます。
2つ目は、2級水先人として2年以上の実務経験があり、その後登録水先人養成施設にて3か月の1級水先人養成課程を修了することで受験資格を満たせます。
水先人の欠格事由
水先法第6条による欠格条項に当てはまる場合は試験を受験することができません。人によっては水先人になれないこともありますので確認してください。
(欠格条項)
第6条 次の各号のいずれかに該当する者は、水先人となることができない。一 日本国民でない者
二 禁錮以上の刑に処せられた者であつて、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しないもの
三 海技士の免許又は船舶職員法第23条の2第1項に規定する小型船舶操縦士の免許を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者
四 船長又は航海士の職務につき業務の停止を命ぜられ、その業務の停止の期間中の者
五 船長又は航海士の職務につき3回以上業務の停止を命ぜられ、直近の業務の停止の期間が満了した日から5年を経過しない者
六 水先人の免許を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者出典:水先法(外部リンク)
合格率と試験の内容
水先人試験の内容は「身体検査」「筆記試験」「口述試験」になります。
筆記試験は水先法など関係法規、気象・海象の知識などが問われます。口述試験には英会話も含まれます。
合格率についてはについてははっきりとはわかりませんが、試験を受けるまでに実務経験や養成課程修了と、受験者は数年にかけて水先人になるために集中した生活を送らなければならないこともあり、簡単な試験ではありませんがかなり高確率で合格できるようです。80%以上と言う話もあります。
試験よりも受験資格を満たす方が難関になるタイプの資格と言えるでしょう。
まとめ
以上が水先人(水先案内人)に関するまとめになります。
特殊な環境下での仕事になりますが高収入が狙える資格のひとつですので、そう言った職に就きたい方は要注目です。
かつては若い方がほとんど目指すことのできない資格でしたが現在は若いうちから目指せるようになっていますので、若い方も進路のひとつとして水先人に注目しても良いのではないでしょうか。
少しでも参考になれば幸いです。