弁理士とは特許、実用新案、意匠や商標を特許庁に対して行う出願業務の代行を独占業務とする国家資格です。
弁理士の特徴
文系の資格のように見えますが実は「理系の弁護士」とも言える理系分野の多い仕事です。
弁理士の仕事内容
商標とは自分の商品を他の人の商品と区別するロゴやマーク、音声などを指します。皆さんよくご存じのGoogleのロゴも国際登録されています。
こう言った商標登録も弁理士に依頼することができます。
弁理士は先述したように特許、実用新案、意匠および商標の出願代行を独占業務としますが、その他にもこれらの権利侵害に対する審判請求や紛争仲介の代理も行うことができます。
紛争や裁判と言えば弁護士の仕事と言ったイメージがありますが、著作権などの知的財産権は弁理士の専門分野なのです。
例えば「自分の描いたキャラクターがパクられた!」と訴えた人がいたとしますが、似ているからなんでも権利侵害だと言えばさすがにそれはおかしなことになってしまいます。
そこで権利を侵害されたと判断する決め手となるのは「どこにオリジナリティがあるのか」と言うことになります。こういったところで専門的な見解が要求されるのです。
特許や実用新案などの出願でも同じように、類似特許の調査はもちろん、そのアイデアのどこにフォーカスした出願をするかが重要になってきます。
また弁理士は特許庁に登録する工業所有権の専門家として誕生した資格です。
試験は法律中心で文系の資格のように見えますが、このような工業所有権の特許は科学技術に深く関係してくるため、弁理士の8割は理系出身者であると言われています。
将来性については少々不安
弁理士の数は増えていますが、肝心の特許出願件数が減っています。また弁理士が増えたことで就職するハードルも高くなっています。
さらに知財業務は人工知能(AI)によって自動化が可能により、なくなってしまう可能性が高いと言う記事も多く見られます。
かつては試験に合格すれば需要は十分にあると考えられていましたが、現時点では必ずしもそうとは言えず、将来性については現時点では有望とは言いづらいです。
年収は平均700万円程度
弁理士の有資格者となったあとの就職先は一般企業や特許事務所になることが多いです。
就職先や勤続年数によって大きく差は出ますが大体700万円程度が平均であると言われています。
もちろん年収1000万円を超えている方もいますし、腕が良い方は2000万円、3000万円と稼ぐようです。
他資格への影響
まず弁理士は無試験で行政書士に登録できます!
他には弁理士の業務に通算2年以上従事すると税理士試験の受験資格が得られたり、弁理士試験に合格することで社会保険労務士試験の受験資格が得られたりします。
弁理士になるには
国家試験に合格すれば有資格者になれます。試験に受験資格はなく、基本的に誰でも受験できます。試験合格後登録をすることで弁理士になれます。
また弁護士は無試験で登録できます。
合格率は約7%程度
弁理士試験の難易度をはかるために合格率を見てもらえればよくわかると思います。
昔に比べて合格しやすくなったとは言われていますがそれでも合格率は10%を超えることの方が圧倒的に少ない難易度の高い試験になっています。
試験の内容
短答式筆記試験
マークシート方式で「工業所有法」「工業所有権に関する条例」「著作権法」「不正競争防止法」から出題され、およそ65%得点できれば合格となります。
短答式筆記試験に合格すると論文式筆記試験を受けられます。
論文式筆記試験
「必須科目」と「選択科目」の2つあります。
必須科目は工業所有法(特許・実用新案法、意匠法、商標法の3科目)。
選択科目は次の6科目のうち1つをあらかじめ選択します。
- 理工Ⅰ(材料力学・流体力学・熱力学・土質工学)
- 理工Ⅱ(基礎物理学・電磁気学・回路理論)
- 理工Ⅲ(物理化学・有機化学・無機化学)
- 理工Ⅳ(生物学一般・生物化学)
- 理工Ⅴ(情報理論・計算機工学)
- 弁理士の業務に関する法律
論文式筆記試験に合格すると口述試験を受けられます。
口述試験
面接方式で工業所有権法(特許・実用新案法、意匠法、商標法の3科目)に関する試験になります。
免除制度に注目
短答式筆記試験の免除
一度短答式筆記試験に合格すれば2年間有効となり、この期間内は短答式筆記試験がすべて免除となります。
また工業所有権に関する科目の単位を取得し、大学院を修了した者は一部の短答式筆記試験が免除されます。
論文式筆記試験の免除
こちらも同様に必須科目・選択科目ともに一度合格すれば2年間有効でその期間は免除されます。
そして短答式筆記試験と同様に、一定の修士・博士の学位を有する者も免除されますが、もうひとつ注目するべきことがあります。
論文式筆記試験の選択科目の免除要件に技術士、一級建築士、電気主任技術者(1種か2種)、薬剤師、情報処理技術者の一部、電気通信主任技術者、司法試験合格者、司法書士、行政書士の公的資格者が含まれていることです。
どれも難関の資格ばかりですが理系職の資格も多いです。
まとめ
以上が弁理士のなり方、試験の難易度、年収や仕事内容などのまとめになります。いかがでしたか?
先行きが少々不透明ではありますが資格の性質上、理系技術者が「先生」に転身する一発逆転の資格と言えるかもしれません。
弁理士資格に挑戦しようかと考えておられる方の参考になれば幸いです。