技術士とは科学技術に関する高度の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価またはこれらに関する業務を行う、名称独占の国家資格です。
技術士の特徴
科学技術応用面での最高権威の資格になっています。
技術士とは
技術士は技術上の問題を発見して解決に導くと言った科学技術に関する技術コンサルタントです。
そして技術士の国家資格は1つではなく全部で21の部門があり、それぞれの部門においてその分野の専門家であることを現します。
- 機械部門
- 船舶・海洋部門
- 航空・宇宙部門
- 電気電子部門
- 化学部門
- 繊維部門
- 金属部門
- 資源工学部門
- 建設部門
- 上下水道部門
- 衛生工学部門
- 農業部門
- 森林部門
- 水産部門
- 経営工学部門
- 情報工学部門
- 応用理学部門
- 生物工学部門
- 環境部門
- 原子力・放射線部門
- 総合技術監理部門
名称独占の国家資格なので技術士の資格がなければ技術コンサルト業務ができないと言ったことはなく誰でも行うことはできるのですが、技術士の資格があることは国家が認める質の高い技術を持っている証明になりますので顧客の信頼は得やすいでしょう。
国境を越えて活躍する技術者も
1995年のAPEC首脳会議にて「APEC域内の発展を促進するためには、技術移転が必要であり、そのためには国境を越えた技術者の移動が不可欠である」と言う決定がなされたことで始まった、有能な技術者が国境を越えて自由に活動できるためのAPECエンジニア登録制度と言う制度があります。
この制度に参加するオーストラリア、カナダ、中国香港、韓国、マレーシア、ニュージーランド、インドネシア、フィリピン、アメリカ、タイ、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、ロシアで共通の「APECエンジニア」と言う称号を持ち、国境を越えて活躍することが可能になります。
技術士は一級建築士とともにAPECエンジニアとして登録の対象となっています。
またIPEA国際エンジニアとして活躍することも可能です。
IPEA国際エンジニアとは国際エンジニア協定(International Professional Engineer Agreement)に加盟しているエコノミーの技術者団体間で一定の基準を満たす技術者を国際エンジニア登録簿に登録を行うこととしているものです。
日本でIPEA国際エンジニアに登録された技術士はIntPE(Jp)と呼ばれます。
※IntPE=International Professional Engineer
APECエンジニアのように政府間で相互承認しているわけではなく、各国のエンジニア協会同士で相互承認するものになります。
加盟エコノミーは日本、オーストラリア、カナダ、チャイニーズ・タイペイ、中国香港、インド、アイルランド、韓国、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、南アフリカ、スリランカ、英国、米国です。
平均年収は500~600万円
技術士の平均年収は500~600万と言われています。
勤務先によって年収は異なりますが有資格者の多くは建設会社や製造業に就職し、上級技術職員として活躍しています。他にはコンサルタント会社に勤務したり、また技術コンサルタントとして独立開業する方もいらっしゃいます。
高度の専門的応用能力を持つ技術士は需要も高く、安定した収入が得られるでしょう。
また企業に技術士有資格者がいることで公共工事評価があがると言う利点が企業側にあるため(受注金額があがります)、転職にも有利な資格と言えます。
他資格への影響
技術士の資格が影響を及ぼす他資格の数はかなり多く、全部門を対象にすると当ブログで紹介している分だけでも15資格あります。
まず第1に技術士第2次試験合格者は社会保険労務士試験の受験資格を満たします。
第2に技術士の情報工学部門登録者は中小企業診断士試験の経営情報システムの科目が免除対象になります。
第3に機械部門(選択科目が流体工学または熱工学)、上下水道部門、衛生工学部門、これらを選択科目とした総合技術監理部門の二次試験合格者に限られますが、管工事施工管理技士の技術検定の学科試験が1級・2級ともに免除となります。
第4に消防設備士の甲種には受験資格がありますが技術士第2次試験合格者はその受験資格を満たします。
第5に技術士の機械部門、電気・電子部門、化学部門、水道部門、衛生工学部門の2次試験に合格した方は消防設備点検資格者の受講資格を満たします。
第6に技術士(建築部門)の資格は民間資格のマンション維持修繕技術者試験の受験資格を満たします。
第7に技術士の電気電子部門、建設部門、総合技術監理部門合格者は電気工事施工管理技士(1級・2級)の学科試験が免除対象になります。
第8に技術士二次試験合格者は労働安全コンサルタント試験の受験資格を実務経験なしで満たせるほか、機械部門、船舶・海洋部門、航空・宇宙部門、金属部門、電気電子部門、化学部門、農業部門の一部、資源工学部門、建設部門、森林部門の一部、経営工学部門の一部は科目免除の対象になっています。
第9に技術士は労働衛生コンサルタント試験の受験資格を満たす上に、衛生工学部門であれば一部の科目が免除となります。
第10に気象予報士試験。応用理学部門の技術士が3年以上予報業務に従事した場合、気象予報士試験の学科試験が全科目免除となります。
第11に土地区画整理士技術検定です。建設部門(選択科目「都市及び地方計画」)の合格者で土地区画整理事業に関する1年以上の実務経験がある場合、土地区画整理士技術検定の実地試験の受験資格を満たします。
第12に土木施工管理技士の試験において技術士第二次試験合格者で技術部門が建設部門、上下水道部門、農業部門(選択科目を農業土木)、森林部門(選択科目を森林土木)、水産部門(選択科目を水産土木)、総合技術監理部門(選択科目を建設部門、上下水道部門に係るもの、「農業土木」「森林土木「水産土木」)であって2級なら2級の、1級なら1級の学科+実地試験の受験資格を満たす実務経験があれば学科試験が免除されます。
第13に造園施工管理技士の試験において技術士第二次試験合格者で技術部門が建設部門、農業部門(選択科目を農業土木)、林業部門(選択科目を林業)、森林部門(選択科目を森林土木)の合格者であって2級なら2級の、1級なら1級の学科+実地の受験資格を満たす実務経験があれば学科試験が免除されます。
第14に建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)の免状を得るための講習があるのですが、技術士の機械・電気電子・上下水道・衛生工学部門の登録を受けた者であれば実務経験なしで受講資格を満たすことが可能です。
最後に技術士第二次試験合格者は作業環境測定士試験の受験資格を満たす上に化学部門、金属部門、応用理学部門であれば共通科目の「分析概論」が免除となります。また衛生工学部門で空気環境の測定の実務経験が3年以上ある場合は共通科目の「分析概論」免除+選択科目「放射性物質」以外免除となります。
技術士になるには
第一次試験、第二次試験に合格し、登録することで技術士を名乗れます。
一次試験には受験資格はありませんが二次試験を受験するには一次試験を突破してから長い実務経験が必要となります。
受験資格と技術士補
一次試験は年齢・学歴・実務経験などと言った制限はなく、基本的に誰でも受験できます。
そしてその一次試験に合格するか、文部科学大臣が指定した大学その他の教育機関における課程(JABEE認定課程)を修了した方は「技術士補」となる資格を有します。登録することで技術士補になることができます。
二次試験の受験資格は技術士補、もしくは技術士補となる資格は有する者が実務経験を積むことで得られます。
実務経験の年数は技術士補であれば4年または7年、技術士補となる資格を有する者は7年または10年とかなり長いです。
技術士第二次試験を受験するには、受験申込みを行う時点で、以下の〔1〕及び〔2〕の要件を満たす必要があります。
〔1〕 技術士補となる資格を有していること。 (上記1.参照)
〔2〕 下記の1〕~3〕のうち、いずれかの業務経歴(科学技術に関する実務経験)を有していること。
1〕 技術士補として、技術士の指導の下で、4年(総合技術監理部門は7年)を超える実務経験。
※ 技術士補登録後の期間に限る。
2〕 職務上の監督者の指導の下で、4年(総合技術監理部門は7年)を超える実務経験。
※ 技術士第一次試験合格後の期間、指定された教育課程修了後の期間に限る。
3〕 指導者や監督者の有無・要件を問わず、7年(総合技術監理部門は10年)を超える期間の実務経験。
※ 技術士第一次試験合格以前の実務経験、指定された教育課程修了以前の実務経験も含む。
また先に紹介しましたように、JABEE(ジャビー)の認定プログラムを持つ学校を修了すると技術士補となる資格を有する者になりますので特定の学校を卒業すれば第一次試験は実質免除となります。
さまざまな国公立大学、工業大学、有名私大や工業高校がJABEEの認定プログラムを持っています。将来技術士を目指す、もしくは工業系に進路を定めた段階でこのあたりも注目しておくとよいと思います。
ちなみに私も大学は工学部だったのですが、同系の学科が2つあり、私が通っていた方の学科はJABEE認定されておらず、もう1つはJABEE認定されていると言った非常に残念な進路選択をしてしまいました…比較的テストもよく似た学科同士だったのに私の方は微妙に残念な感じです。
深く考えずに進路を決めた私が浅はかだっただけなのですが、これから工学部に入学しようと考えていらっしゃる方がこの記事を見ていらっしゃったら、せっかくなのでこのあたりも是非考えて進路選択をしてほしいなと思います!
合格率は?
難易度は部門により異なり、バラつきがあるので平均しづらいのですが一次試験の合格率はだいたい40%程度、二次試験の最終合格率は15%程度になっています。
ちなみに平成28年度の一次試験合格率は49%、二次試験は14.6%でした。
技術士試験には科目合格がないため、不合格であれば再受験する必要があります。計画的に勉強する必要がありますね。
試験の内容
一次試験は択一式の試験で、二次試験は筆記試験と口頭試験になります。
一次試験の内容
基礎科目・適正科目・専門科目の3つの科目があります。
基礎科目では科学技術全般に関する基礎知識が問われます。
(1) 設計・計画に関するもの(設計理論、システム設計、品質管理等)
(2) 情報・論理に関するもの(アルゴリズム、情報ネットワーク等)
(3) 解析に関するもの(力学、電磁気学等)
(4) 材料・化学・バイオに関するもの(材料特性、バイオテクノロジー等)
(5) 環境・エネルギー・技術に関するもの(環境、エネルギー、技術史等)
適正科目は技術士法第4章(技術士等の義務)の規定の遵守に関する適正を問う問題が出題されます。
専門科目は受験者があらかじめ選択した技術部門に係る基礎知識・専門知識が問われます。
技術部門は機械部門、船舶・海洋部門、航空・宇宙部門、電気電子部門、化学部門、繊維部門、金属部門、資源工学部門、建設部門、上下水道部門、経営工学部門、情報工学部門、応用理学部門、生物工学部門、環境部門、原子力・放射線部門の20になります。
かつてはこれら科目に加えて共通科目と言う科目があり、4年生の理工系大学卒業者や所定の国家資格保持者は共通科目が免除対象となっていたのですが、平成25年から共通科目は基礎科目に統合される形で廃止されたため、技術士試験における免除はなくなってしまいました。
二次試験の試験内容
技術部門ごとに行う試験になり、21の技術部門の中から1部門を選択して受験します。
筆記試験+口頭試験で構成されていますが、筆記試験の科目は総合技術監理部門とそれ以外とで異なります。
総合技術監理部門以外の筆記試験の科目は必須科目Ⅰ、選択科目Ⅱ、選択科目Ⅲです。
必須科目Ⅰでは受験する技術部門全般にわたる専門知識が問われ、選択科目Ⅱでは選択した科目の専門知識や応用能力、選択科目Ⅲでは選択した科目に関する課題解決能力が問われます。
総合技術監理部門の筆記試験の科目は必須科目Ⅰ、選択科目Ⅱです。
必須科目Ⅰでは安全管理、社会環境との調和、経済性、情報管理、人的資源管理について問われ、総合技術監理部門に関する課題解決能力および応用能力が問われます。
選択科目Ⅱは選択した科目の専門知識や応用能力が問われます。
口頭試験は筆記試験合格者のみ受験することができ、技術士としての適正などについて口頭で問われます。
なお総合技術監理部門とそれ以外の部門は併願することもできます。
まとめ
以上が技術士に関するまとめになります。
名称独占の資格で知名度もやや低い資格ですが科学技術応用面での最高権威の資格であり、仕事においても取得することのメリットは多く、さらに稼げる資格ランキングでも上位の方にランクインしていると言う難易度に見合った見返りのある資格と言えますね。
少しでも参考になれば幸いです。