クレーン・デリック運転士とは、建設現場や工場などで荷重5トン以上のクレーンの運転業務を行うことができる業務独占資格である国家資格です。
比較的稼げる資格であると言われているクレーン免許、その中のひとつであるクレーン・デリック運転士は「限定なし」「クレーン限定」「床上運転式クレーン限定」の3つの区分に分かれています。
そんなクレーン・デリック運転士免許の資格の内容の詳しい解説、平均年収やお給料、試験の難易度や内容と言ったところまで一挙解説していきます。
クレーン・デリック運転士の特徴
中高年、女性、外国人など一見すると少し意外に感じる方々の資格取得も増えてきている人気の資格です。
3つの区分について
クレーン・デリック運転士はかつてあった資格である「クレーン運転士」と「デリック運転士」が2006年に統合されたことによってできた資格であり、似たように見えますがクレーンとデリックは別物になります。
クレーンは荷をつり上げて水平に運搬する機械、デリックはワイヤーロープを操作することによって荷物を吊り上げる機械になるのですが、全く知らない方にとっては文字だけ見てもさっぱりわからないと思います。
何とか画像で比較してみようと結構さがしたのですがデリックの画像が見つかりませんでしたので今回は割愛させてください…発見次第また掲載いたします。
さて、最初に紹介しましたようにクレーン・デリック運転士の資格は以下3つの区分に分かれています。
- クレーン・デリック運転士免許(限定なし)
- クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)
- クレーン・デリック運転士免許(床上運転式クレーン限定)
クレーン・デリック運転士免許(限定なし)
つり上げ荷重5トン以上を含め、すべてのクレーンとデリックを運転操作することができます。
3つの区分の中で唯一デリックも操作できる免許になります。
現在デリックの台数は少なくなってきていますがそれでもまだ使用されていますのでいざと言うときに役立つ可能性のある資格になります。
クレーン・デリック運転士(クレーン限定)
つり上げ荷重5トン以上を含め、すべてのクレーンを運転・操作することができる免許になります。
デリックを扱うことはできません。
クレーン・デリック運転士(床上運転式クレーン限定)
つり上げ荷重5トン以上の床上運転式クレーンを運転・操作することができる免許になります。
また5トン未満であればクレーンも運転・操作できます。
床上運転式クレーンとは工場の天井に設置されているタイプのクレーンのことを指します。
イメージとしては↑のような感じのものです。
ちなみによく似た名前で「床上操作式クレーン」と言うものがありますが、こちらとは別物です。
床上操作式クレーンを扱うには「床上操作式クレーン運転技能講習」を修了する必要があります。
比較的稼げる資格!クレーン・デリック運転士の年収
クレーンは建設現場や工場、倉庫など幅広い職場で使用されており、かつ扱うにあたって専門技術が必要となるため、有資格者の需要は安定して高いと言えます。
そのためクレーン系の資格は比較的稼げる資格と言われており、その中でもこのクレーン・デリック運転士や移動式クレーン運転士は特に高収入に期待できるようです。
有資格者の年収はお勤め先や年齢によって異なりますが400万円~600万円あたりになるようです。
すでに工場や建設現場で勤務されている方がクレーン・デリック運転士の資格を取得することで資格手当がつくこともあります。
需要が高いことから40代以上の再就職にも有利な資格ではありますがクレーン・デリック運転士は経験者が求められる傾向にあるため、全く未経験からクレーン業界に足を踏み入れようと考えていらっしゃる方は、まずクレーン系資格の基本である玉掛作業者から取得することでさらに再就職にも有利に働くのではないかと考えられます。
クレーンをバリバリ扱うとなると筋骨隆々とした男の仕事!とイメージする方もいらっしゃるかもしれませんが、近年はこうした中高年以上の方の再就職を目的とした資格取得だけでなく、女性の方や外国人の方の免許取得も増えてきているようです。
他資格への影響
クレーン・デリック運転士であればどの区分の免許を取得していたとしても移動式クレーン運転士試験の学科「力学に関する知識」の科目と実技「運転のための合図」の科目が免除対象となります。
またクレーン・デリック運転士であれば玉掛け技能講習の「クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識(3時間)」と実技の「クレーン等の運転のための合図(1時間)」の科目が免除されるため、通常より早く終わらせることが可能になります。
クレーン・デリック運転士になるには
試験に合格すればOKです。受験資格は特になく誰でも受験できます。
ただし満18歳未満の方の場合は合格しても18歳になるまで免許証が交付されません。
クレーン・デリック運転士の試験と難易度
試験は学科試験と実技試験の2つに分かれています。
限定なし・クレーン限定・床上運転式クレーン限定ともに学科試験4科目、実技試験2科目となっています。
学科試験は以下の4科目。
- クレーン及びデリックに関する知識
- 関係法規
- 原動機及び電気に関する知識
- クレーンの運転のために必要な力学に関する知識
実技試験は以下2科目になります。
- クレーンの運転
- クレーンの運転のための合図
試験の難易度ですが公益財団法人安全衛生技術試験協会によりますと平成29年度の合格率はすべて合わせて以下のようになっています。
学科試験 | 受験者 25,760人 |
合格者 11,592人 |
合格率 45.0% |
---|---|---|---|
実技試験 | 受験者 2,994人 |
合格者 1,497人 |
合格率 50.0% |
年々難易度は上昇傾向とは言え、過去の統計を見ましても難易度はそれほど高くない資格だと言えます。
科目免除について
限定なし・クレーン限定・床上運転式クレーン限定すべてにおいて、一定の条件を満たすことで科目免除があります。
限定なしの科目免除
まず実技試験が全科目免除となるのは以下のケース。
- クレーン運転実技教習を修了した日から1年以内の者(床上運転式クレーン以外)
- 鉱山にてつり上げ荷重が5トン以上のクレーンの運転の業務に1か月以上従事した者(床上操作式クレーン・床上運転式クレーン以外)
実技「運転のための合図」が免除となるのは以下のケース。
- 床上運転式クレーンを用いて行うクレーン運転実技教習を修了した日から1年以内の者
- 鉱山にてつり上げ荷重が5トン以上の床上運転式クレーンの運転の業務に1か月以上従事した者
学科試験が全科目免除となるのは以下のケース。
- クレーン・デリック運転士(限定なし)の学科試験に合格して1年以内の者
学科「原動機及び電気に関する知識」「力学に関する知識」の科目が免除となるのは以下のケース。
- クレーン・デリック運転士(クレーン限定、床上運転式クレーン限定)の学科試験に合格して1年以内の者
学科「原動機及び電気に関する知識」「力学に関する知識」および実技試験全科目が免除されるのは以下のケース。
- クレーン・デリック運転士(クレーン限定)免許を有する者
学科「原動機及び電気に関する知識」「力学に関する知識」および実技「運転のための合図」が免除となるのは以下のケース。
- クレーン・デリック運転士(床上運転式クレーン限定)免許を有する者
学科「力学に関する知識」および実技「運転のための合図」が免除となるのは以下のケース。
- 移動式クレーン又は揚貨装置運転士免許を有する者
- 旧デリック運転士免許を有する者
実技「運転のための合図」が免除となるのは以下のケース。
- 床上操作式クレーン運転技能講習を修了した者
- 小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者
- 玉掛け技能講習を修了した者
クレーン限定の科目免除
まず実技試験が全科目免除となるのは以下のケース。
- クレーン運転実技教習を修了した日から1年以内の者(床上運転式クレーン以外)
- 鉱山にてつり上げ荷重が5トン以上のクレーンの運転の業務に1か月以上従事した者(床上操作式クレーン・床上運転式クレーン以外)
実技「運転のための合図」が免除となるのは以下のケース。
- 床上運転式クレーンを用いて行うクレーン運転実技教習を修了した日から1年以内の者
- 鉱山にてつり上げ荷重が5トン以上の床上運転式クレーンの運転の業務に1か月以上従事した者
学科試験全科目免除となるのは以下のケース。
- クレーン・デリック運転士(クレーン限定、床上運転式クレーン限定)の学科試験に合格した日から1年以内の者
学科全科目免除および実技「運転のための合図」が免除となるのは以下のケース。
- クレーン・デリック運転士(床上運転式クレーン限定)免許を有する者
学科「力学に関する知識」および実技「運転のための合図」が免除となるのは以下のケース。
- 移動式クレーン又は揚貨装置運転士免許を有する者
- 旧デリック運転士免許を有する者
実技「運転のための合図」が免除となるのは以下のケース。
- 床上操作式クレーン運転技能講習を修了した者
- 小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者
- 玉掛け技能講習を修了した者
床上運転式クレーン限定の科目免除
まず実技試験全科目免除となるのは以下のケース。
- 床上運転式クレーンを用いて行うクレーン運転実技教習を修了した日から1年以内の者
- 鉱山においてつり上げ荷重が5トン以上の床上運転式クレーンの運転の業務に1か月以上従事した者
学科試験全科目免除となるのは以下のケース。
- クレーン・デリック運転士(限定なし、クレーン限定、床上運転式クレーン限定)の学科試験に合格した日から1年以内の者
学科「力学に関する知識」および実技「運転のための合図」が免除となるのは以下のケース。
- 移動式クレーン又は揚貨装置運転士免許を有する者
- 旧デリック運転士免許を有する者
実技「運転のための合図」が免除となるのは以下のケース。
- 床上操作式クレーン運転技能講習を修了した者
- 小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者
- 玉掛け技能講習を修了した者
まとめ
以上がクレーン・デリック運転士(限定なし、クレーン限定、床上運転式クレーン限定)についてのまとめになります。
需要が高く、経験を積めば高収入も見えてくる専門的な資格ですし、本気でやるならば難易度もそこまで高くないことから一発逆転にはある意味もってこいの資格かもしれませんね。
少しでも参考になれば幸いです。