ボイラー技士とは蒸気ボイラー、温水ボイラーを取り扱う業務を行うことのできる国家資格であり、国家試験に合格し免許を取得しなければこれら業務を取り扱うことのできない業務独占資格です。
ボイラー技士の特徴
定年後も働ける資格と言われ、比較的高齢の方にも人気の資格です。
ボイラーとは
ボイラーとは圧力容器の中に水や油を入れて沸騰させ、大気圧を超える圧力の蒸気を発生させ、蒸気や温水を供給する装置のことを言います。大きなやかんのように例えられることが多いです。
普段あまり目にすることはありませんが学校、病院、工場など大型の施設での暖房や殺菌、生産ラインを動かしたり、家庭ではお風呂のお湯を出す給湯器、他には蒸気機関車や火力発電もボイラーが使われています。
ボイラー技士の級と区分
ボイラー技士の国家試験に合格し、免許を受けなければボイラーを取り扱う業務に就くことはできません。
ボイラー技士の資格は特級・一級・二級の3種類存在し、特級が最上位になります。
特級も一級も二級もすべてのボイラーを取り扱うことができるのですが「作業主任者」に選任できるボイラーの規模が異なります。
- ボイラーの伝熱面積が500㎡以上→特級ボイラー技士
- ボイラーの伝熱面積の合計が25㎡~500㎡未満(貫流ボイラーのみの場合は500㎡以上も可)→特級・一級ボイラー技士
- ボイラーの伝熱面積の合計が25㎡未満→特級・一級・二級ボイラー技士
年収や求人は比較的安定している
ボイラー技士の平均年収は300万円~400万円と高い方ではありませんが業務独占資格であるがゆえに求人は比較的安定していると言えます。
また比較的高齢者の割合も高いビル管理会社やメンテナンス業界でもボイラー技士の資格が生かせますので、中高年以上の方にもおすすめと言えます。
ボイラー技士と非常に相性が良いと言われる乙種第4類危険物取扱者はもちろん、他には第2種電気工事士、管理業務主任者、消防設備士などを合わせて持っていれば定年後の再就職にかなり有利に働くでしょう。
ボイラー自体が扱いを間違うと爆発を起こす危険なものではありますが、近年は全自動化されたボイラーも増えてきていますので体力的な負担は軽くなりつつあるため女性のボイラー技士も増えてきています。
他資格への影響
特級ボイラー技士であれば社会保険労務士試験の受験資格を満たせます。
また特級ボイラー技士であれば実務経験1年以上、一級ボイラー技士であれば実務経験4年以上で建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)の免状を得るための講習の受講資格を満たすことができます。この資格はビルメン業界で非常に有利な資格ですのでボイラー技士と相性も良いです。
ボイラー技士になるには
試験に合格し、免許を受けることでボイラー技士として活躍できます。二級には受験資格がなく誰でも受験できますが、一級・特級は受験資格があります。
一級・特級の受験資格
二級ボイラー技士試験には受験資格はありませんが、一級は基本的に二級合格者、特級は基本的に一級合格者が受験できる仕組みになっています。
しかし学校にて規定の課程を修了したり、別の資格を持っていることで受験資格を満たすことも可能です。
一級ボイラー技士の受験資格
- 二級ボイラー技士免許を受けた者
- 学校教育法による大学(短期大学を含む。)、高等専門学校、高等学校又は中等教育学校を卒業し、その後1年以上の実地修習を経たもの
- 大学改革支援・学位授与機構により学士の学位を授与された者で、その後1年以上の実地修習を経たもの
- 省庁大学校を卒業(修了)した者で、その後1年以上の実地修習を経たもの
- 専修学校の専門課程(2年以上・1700時間以上)の修了者(大学入学の有資格者に限る。)などで、その後大学等において大学評価・学位授与機構により学士の学位を授与されるのに必要な所定の単位を修得した者で、その後1年以上の実地修習を経たもの
- 指定を受けた専修学校の専門課程(4年以上)を一定日以後に修了した者など(学校教育法施行規則第155条第1項該当者)で、その後1年以上の実地修習を経たもの
- エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)第9条第1項のエネルギー管理士(熱)免状を有する者で、1年以上の実地修習を経たもの
- 海技士(機関1、2、3級)免許を受けた者
- ボイラー・タービン主任技術者(1種又は2種)免状を有する者で、伝熱面積の合計が25㎡以上のボイラーを取り扱った経験があるもの
- 保安技術職員国家試験規則による汽かん係員試験に合格した者で、伝熱面積の合計が25㎡以上のボイラーを取り扱った経験があるもの
※学校卒業+実地修習1年以上のものはボイラーに関する学科を修めた者にかぎります。
特級ボイラー技士の受験資格
- 一級ボイラー技士免許を受けた者
- 学校教育法による大学(短期大学を含む。)又は高等専門学校を卒業した者で、その後2年以上の実地修習を経たもの
- 大学改革支援・学位授与機構により学士の学位を授与された者で、その後2年以上の実地修習を経たもの
- 省庁大学校を卒業(修了)した者で、その後2年以上の実地修習を経たもの
- 専修学校の専門課程(2年以上・1700時間以上)の修了者(大学入学の有資格者に限る。)などで、その後大学等において大学評価・学位授与機構により学士の学位を授与されるのに必要な所定の単位を修得した者で、その後2年以上の実地修習を経たもの
- 指定を受けた専修学校の専門課程(4年以上)を一定日以後に修了した者など(学校教育法施行規則第155条第1項該当者)で、その後2年以上の実地修習を経たもの
- エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)第9条第1項のエネルギー管理士(熱)免状を有する者で、2年以上の実地修習を経たもの
- 海技士(機関1、2級)免許を受けた者
- ボイラー・タービン主任技術者(1種又は2種)免状を有する者で、伝熱面積の合計が500㎡以上のボイラーを取り扱った経験があるもの
※学校卒業+実地修習2年以上のものはボイラーに関する講座または学科を修めた者にかぎります。
合格率は一級・二級は50%以上
特級ボイラー技士試験の合格率は20%前後になりますが、一級ボイラー技士試験・二級ボイラー技士試験は50%以上と比較的挑戦しやすい試験になっています。
ちなみに平成28年度の合格率は特級ボイラー技士が19.0%、一級ボイラー技士試験が60.7%、二級ボイラー技士試験が58.5%でした。
試験の内容
試験科目は特級・一級・二級すべて以下の4科目です。
- ボイラーの構造に関する知識
- ボイラーの取扱いに関する知識
- 燃料及び燃焼に関する知識
- 関係法令
一級・二級は科目免除等は一切ありませんが、特級は一部の科目で合格点をとれば2年間有効となります。
免許について
ボイラー技士になるには試験合格後に免許を受ける必要があります。
特に二級ボイラー技士に受験資格はありませんが免許を受けるには条件がありますので確認しておく必要があります。
なお免許は18歳以上でなければ取得することができません。
二級ボイラー技士の免許交付要件
一般的には「イ」の④の実技講習を受けることで免許を受ける方が多いです。
イ 次のいずれかに該当する者で、二級ボイラー技士免許試験に合格したもの
- 学校教育法による大学、高等専門学校、高等学校等においてボイラーに関する学科を修め3ヶ月以上の実地修習を経た者
- 6ヶ月以上ボイラーの取扱いの実地修習を経た者
- 都道府県労働局長又は登録教習機関が行ったボイラー取扱技能講習を修了し、4ヶ月以上小規模ボイラーを取扱った経験がある者
- 登録ボイラー実技講習機関が行うボイラー実技講習(20時間)を修了した者
- 熱管理士免状(エネルギー管理士(熱)免状も該当)を有する者で、1年以上の実地修習を経た者
- 海技士(機関3級以上)免許を受けた者
- 海技士(機関4,5級)の免許を有する者で、伝熱面積の合計が25m2以上のボイラーの取扱経験者
- ボイラー・タービン主任技術者(1種,2種)免状を有する者で、伝熱面積の合計が25m2以上のボイラーの取扱い経験者
- 保安技術職員国家試験規則による汽かん係員試験に合格したもので、伝熱面積の合計が25㎡以上のボイラーを取り扱った経験があるもの
- 鉱山において、伝熱面積の合計が25m2以上のボイラーを取り扱った経験がある者
- (但しゲージ圧力が0.4MPa以上の蒸気ボイラー又はゲージ圧力0.4MPa以上の温水ボイラーに限る。)
ロ 職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第27条第1項の準則訓練である普通職業訓練のうち、職業能力開発促進法施行規則(昭和44年労働省令第24号)別表第2の訓練科の欄に定める設備管理・運転系ボイラー運転科又は同令別表第4の訓練科の欄に掲げるボイラー運転科の訓練(通信の方法によって行うものを除く。)を修了した者
ハ 厚生労働大臣が定める者
一級ボイラー技士の免許交付要件
一級の免許を受けるには試験合格だけでなく所定の実務経験等が必要になります。
参照:一級ボイラー技士免許の取得について(一般社団法人 日本ボイラ協会)
- 二級ボイラー技士試験免許を受けた後、2年以上ボイラー(小規模ボイラー及び小型ボイラーを除く。以下同じ。)を取り扱った経験がある者又は当該免許を受けた後、1年以上ボイラー取扱作業主任者としての経験がある者で、一級ボイラー技士免許試験に合格したもの
- ボイラー及び圧力容器安全規則第101条第2号ロ又はハに掲げる者で、一級ボイラー技士免許試験に合格したもの
なお「ボイラー及び圧力容器安全規則第101条第2号ロ又はハ」は以下になります。
ロ 学校教育法 による大学、高等専門学校、高等学校又は中等教育学校においてボイラーに関する学科を修めて卒業した者で、その後一年以上ボイラーの取扱いについて実地修習を経たもの
ハ イ又はロに掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者
特級ボイラー技士の免許交付要件
特級ボイラー技士の免許交付要件も一級ボイラー技士と同様に試験合格だけでなく所定の実務経験等が必要になります。
参照:特級ボイラー技士免許の取得について(一般社団法人 日本ボイラ協会)
- 一級ボイラー技士試験免許を受けた後、5年以上ボイラー(小規模ボイラー及び小型ボイラーを除く。以下同じ。)を取り扱った経験がある者又は当該免許を受けた後、3年以上ボイラー取扱作業主任者としての経験がある者で、特級ボイラー技士免許試験に合格したもの
- ボイラー及び圧力容器安全規則第101条第1号ロ又はハに掲げる者で、特級ボイラー技士免許試験に合格したもの
なお「ボイラー及び圧力容器安全規則第101条第1号ロ又はハ」は以下になります。
ロ 学校教育法 による大学又は高等専門学校においてボイラーに関する講座又は学科目を修めて卒業した者(機構により学士の学位を授与された者(当該講座又は学科目を修めた者に限る。)又はこれと同等以上の学力を有すると認められる者を含む。)で、その後二年以上ボイラーの取扱いについて実地修習を経たもの
ハ イ又はロに掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者
まとめ
以上がボイラー技士に関するまとめになります。
ボイラー技士は昔から危険物取扱者や電気主任技術者、電気工事士などと並んで職に困らない資格としてあげられる国家資格です。
近年ボイラー自体が減ってきていたり、自動化・小型化が進んでいたりしているため法的には免許がなくても扱えるボイラーも多いため、ボイラー技士のニーズについて不安に感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、ボイラーには危険なイメージがありますので法的に資格が必要のない範囲でも有資格者に任せるケースも多いですよ。